コロナ禍でオフィスのリースバック増加―CBRE・山田氏に取引の現況を聞く
CBRE・山田泰秀インベストメントプロパティ副本部長シニアディレクター

 企業が本社ビルなどを第三者に売却し、その後も賃貸借契約に切り替えて使い続ける「セールス&リースバック」(S&LB)が増加傾向だ。背景にコロナ禍による景況悪化や働き方の変化などがあり、オフィス市場の先行きには不透明感が漂う。CBREのインベストメントプロパティ副本部長シニアディレクター、山田泰秀氏にS&LBの状況を聞いた。

 ―国内の不動産市場の現況をどうみる。
 山田氏 特にレジデンスは海外投資家の人気が高く、良い市況が今後も続きそうだ。物流施設は地域によって供給過剰の傾向もあるが、取引の件数は増えている。一方、ホテルはコロナ禍で移動規制の打撃が深刻だ。ただ人の移動が再開されれば復活の目がある。商業施設はコロナ禍以前からEコマースの普及で来店者が減っていて、先を見通すのが難しい。実際に商業施設を売りたい人は多いが購入希望者は減っている。
 ―オフィスをS&LBで手放す企業が増えている。
 山田氏 コロナ禍以前から資金調達や事業所移転を考えていた企業がS&LBを実行し始めている。今は株価が高く金利も低い。高値で売りやすい環境でもある。全体に不動産価格が高止まりしており、100億円単位の取引もある。S&LBなら保有資産を売った後も自社で使えるため、手放すハードルが低い。
 ―国内で過去にS&LBが増えた時期があった。
 山田氏 会計基準の変更などもあり下火になっていたが、コロナ禍で企業の資金需要が高まり人気が再燃した。決して目新しい手法ではない。優良な資産が手元にあれば企業業績の良し悪しに関わらず大きな資金を調達できる点が魅力だ。
 ―売買の相談件数が増えているようだ。
 山田氏 昨年10月から今年3月までに、企業から当社に寄せられた売買の相談件数は98件に上った。これは前年の同時期に比べ3倍以上も多い数字だ。コロナ禍による景況悪化と働き方の変化で、拠点戦略を見直す企業が増えていることが要因だろう。上場企業は3月決算のケースが多く、総会などの対応で4月から6月にかけてはそうした売買の動きが弱まるが、昨年はコロナの影響か、例年よりも相談件数が多かった。
 ―S&LBの相談が特に多いアセットは。
 山田氏 まずオフィスからと考える企業が多い。電通など大企業の取引事例も影響している。物流施設や工場、店舗、ホテルなども売却対象になることを説明すると、それらの選択肢も視野に入れ始めるケースがある。ホテルの相談も増えている。コロナ禍で収益が増減しやすく、適正な取引金額を出しにくいため売買には慎重になる。S&LBは国内ではまだ多数派ではないが、これから広がる可能性がある。
 ―法人向けのS&LBで課題や注意点はあるか。
 山田氏 建物の改修負担の区分を事前に明確にしておかないとトラブルになりやすいようだ。賃貸借契約期間の途中での解約も今後増える可能性があり、そうした事態を当初の契約に織り込んでおく必要がある。
 ―海外の投資家が日本の不動産を注視している。
 山田氏 昨年5月以降に新規の投資家からの問い合わせが増えた。オフィスを買いたがっている海外企業が多いが、国内の主要都市で需給が緩和基調だ。このため、テナントが抜けた際の売主補填(レントギャランティー)は可能かと問われる機会が増えた。そうした措置は日本ではまだ一般的ではないが、今後は売主側に対応が求められるようになることが想定される。(日刊不動産経済通信)

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