ラサール不動産投資顧問の旗艦ファンドである「ラサール・ジャパン・プロパティ・ファンド(LJPF)」の運用総額が1500億円を超えた。一昨年11月の組成後にコロナ禍に見舞われたが、運用利回りを落とさず資産規模を着実に拡大している。ファンドの組成・運用を手掛ける森岡亮太執行役員シニアマネージングディレクターに戦略を聞いた。
―日本の不動産市場をどうみる。
森岡氏 コロナ禍で世界中の投資資金が流入しているが、投資対象は狭まっている。ホテルと商業施設は収益性が落ち、企業業績や働き方の変化でオフィスの先行きも不透明だ。一方、物流施設と都市部の賃貸住宅は底堅い。物流と賃貸レジ、一部の優良オフィスに競うように資金が集まり、価格が上昇している。
―海外の投資家が日本に目を向けている。
森岡氏 アジアは欧米よりもコロナの感染者数が少なく、なかでも日本は不動産市場の規模が大きい。日本市場に特に大きな成長要因があるわけではないが、相対的に評価されているようだ。
―東京など大都市でオフィスの変動性が高い。
森岡氏 景気動向と働き方の変化という変数にコロナ禍が加わり、先を読みにくい。ただ日本社会には対面での交流を重んじる土壌がある。在宅勤務が普及してもオフィスの需要が激減するとは考えていない。感染が落ち着けば市場の戻りも早そうだ。
―LJPFのポートフォリオ編成の考え方を。
森岡氏 組成当初に配分の目安をオフィスは3~4割、物流・レジは各2~3割、商業は1~2割と決めたが、結果的に正解だった。現時点ではこの数字を大きく変える必要はないと考えている。ただオフィスについては企業が拠点を縮小する動きもあり、特に大規模物件は相対的にリスクが高い。東京都心の中規模オフィスに重心を置いていきたい。
―オフィスの取得に二の足を踏むファンドが多い。
森岡氏 東京と大阪、名古屋、福岡を中心に、需給が悪化しても入居者が付くような物件を選んでいく。
―この3月に物件数を増やした。
森岡氏 東京と千葉の賃貸レジ9件と大阪の物流施設1件を追加取得した。物件数は合計16件で、レジは12物件だ。コロナ禍でも稼働率と賃料を維持し、目標通りに利益を分配できたことが評価されたと思う。
―LJPFの目標利回りは。
森岡氏 コロナ禍で目標設定が難しくなっているが、当初目指していた4・5~5・5%は達成し、維持できている。物件取得の競争が激しい環境で現行の数字を保てるよう、戦略を考えているところだ。物件の買い方や価値向上の手法をよほど工夫しないと、今の市況でさらに利回りを高めるのは簡単ではない。
―組成当初、資産規模を5年で3000億円にするという目標を掲げていた。
森岡氏 今でも十分に射程圏内だ。今後は不確実性が相対的に低いレジと物流施設を重視し、オフィスと商業施設はより慎重に選ぶ。物流施設も供給が増え、用地取得の競争が過熱している。ただ日本のEC化率はアジアの他国よりも低く、衰退する要素は少ない。
―新たに別のファンドを作る予定はあるか。
森岡氏 当社グループの既存ファンドで環境認証の取得などを積極的に進めているが、よりESGに特化したファンドを組成できないか全社で検討している。(日刊不動産経済通信)