トップインタビュー・髙智亮大朗 コスモスイニシア社長 一歩先の価値を創造し上質な生活提案へ ―好評を得る幅広い手法で用地を有効活用
髙智亮大朗・コスモスイニシア社長

 ―10月の就任から2カ月を迎えた。抱負を。
 髙智氏 当社のミッションは、お客様や社会に向けて一歩先の価値を発想し提供していくことにある。まだ顕在化していない少し将来のニーズを見い出し商品開発を行って、質が向上する生活提案を図っていく。当社は、若い世代を含め主体性を持った人材が多い社風なので、現場から小さくても新しい発想を生みやすい環境であるよう支援し、事業に取り組んでいきたい。

イニシア和光(イメージ)

 ―レジデンシャル事業の現状と今後の戦略は。
 髙智氏 分譲マンションは、首都圏と近畿圏で供給戸数をもう少し拡大していきたい。当社の開発する住宅は、都心のコンパクトを1つの注力テーマとして、生活者の視点に立った間取りへのこだわりで高い評価を頂いている。用地の取得環境は依然厳しい状況が続くが、当社の創意工夫が生かせる案件は積極的に取得していく。販売中の埼玉県和光市の物件では、起伏があって開発の難しい土地に100戸のマンションを建設する。他社では商品化しにくい道路付けの厳しい土地でも有効活用して長屋形式のタウンハウスなど幅広い手法で事業に取り組む。

イニシアテラス代々木上原

 地方では、需要が高まることを見込んで利便性の高い駅前再開発でアクティブシニア向け分譲マンションの開発に参画する。沖縄県で那覇空港に近い豊崎にリゾート感も備えた物件と、札幌市中心部に2物件を開発中で、今後は福井市の駅前再開発複合タワー内に整備する。リノベーションマンションは、各戸で細かい対応が必要で手間のかかる事業だが、首都圏と近畿圏で年間300戸規模で好調に推移している。当社の強みが出せる事業領域だ。既存建物の活用という社会課題解決にもつながり、事業の効率化も進んでいて、業界内の先駆的な立場で成長させていきたい。

イニシアグラン札幌イースト(イメージ)

 ―ソリューション事業や宿泊事業について。
 髙智氏 開発・再生したオフィスビルなどの投資用不動産について年間20棟前後を販売していく事業と、住宅約1万戸とビルの賃貸事業を展開している。建物を有効活用する発想で不動産価値を高める事業として伸ばしていく。レンタルオフィス事業「ミッドポイント」では、「武蔵小杉」は好調に稼働しているが、コワーキングスペースの人気が想定以上で、レンタルオフィス部分を一部コワーキングに転換している。ニーズに合わせて可変性の余地を残してしなやかに対応することが不動産の活用に必要かもしれない。今後も中小規模の建物の有効利用の提案として、オフィス事業に取り組んでいきたい。

レンタルオフィス「ミッドポイント武蔵小杉」

 宿泊事業「ミマル」は、東京、京都に加え21年から大阪でもオープンする。インバウンド需要特化型だったが、国内向けに宿泊代理店などへ営業を始めて利用者から上々の評価を得ている。週末の京都の施設は稼働率が高く、今後も国内ニーズに対応して一定の需要を得ながら、都市の新しい空間利用の提案として価値を生み出すことがテーマになる。


 ―新たな事業については。
 髙智氏 駐車場の上空利活用事業「ソラキューブ」は第1弾を横浜市の関内に開発した。建物内部は「ミッドポイント」を設置して工夫できたが外観はまだ洗練の余地がある。投資家への高い利益とまちの価値向上を両立する事業で進化させていく。茨城県笠間市の宿泊施設「エトワ笠間」は、週末は想定以上のほぼ100%稼働。公民連携で公共の施設にマンションなどで培った空間設計の知見を活用した再生が好評で、第2弾は千葉県木更津市の廃校を宿泊施設に再生する。(日刊不動産経済通信)

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