2020年はコロナに翻弄された1年だったとはいえ、首都圏分譲マンション市場では賃貸脱出志向が高まり、割安感のある郊外のマンション販売が好転するなど、マイナスの影響は比較的小さかった。ただ、不安定要素が漂うことも確かだ。2021年はどうなり何が求められるのか。首都圏マンション市場の足元と展望を見る。
コロナを機に「買える価格」に1次取得層が反応
デベは安定感の高い実需向けの住宅事業に回帰
2020年の首都圏マンション市場は、緊急事態宣言での前半の販売自粛が大きく響き、新規発売戸数が2万7228戸で、昨年から12.8%減だった。2020年は1~6月の新規発売戸数が前年比44%減となったが、7~12月は同10.8%増と、後半の市場の急回復により、年間の発売戸数は12.8%減にとどまった。3~4月に販売がストップした影響がなければ、5%程度の供給減にとどまっていたと考えられるため、マンション市場自体は、他業種と比べてコロナの影響は最小限に抑えられたと見られている。
2020年も引き続き都内・都心の好立地物件や、近郊・郊外でも駅近・好立地のグロス圧縮物件の売れ行きが好調だったが、一方で沿線力・駅力が弱い、駅遠立地等、立地力の低い商品でも販売の好転が見られた。外出自粛やテレワークの普及により在宅時間が大幅に増加、今の賃貸アパート・マンションに対する不満が高まり、コロナをきっかけにマンション購入に踏み出す一次取得層が増加した。こうした層は元々、購入予定が無かったので、予算が少なく、駅力や駅距離といった立地条件は多少妥協してでも「買える価格」を重視。その結果割安なパワービルダー系の建売戸建てや、3000万円台の割安なファミリーマンションの売れ行きが好転した。コロナ禍でも価格がさらに上昇する中、一部でこれまでの「広さ・価格より立地優先」から「立地・広さより価格優先」への変化が起こったと考えられ、「買える価格」のグロス圧縮商品が販売好調となった。“コロナ特需”と言われる所以でもある。
近年、土地高騰で、デベロッパーは分譲マンション用地の取得が出来ず、高値の土地代でも事業採算の合うホテル、収益商業・事務所ビルなどポートフォリオの転換や多角化が進められていたが、コロナが直撃。当面は投資用ワンルームや一棟収益賃貸マンション開発、物流施設等以外はコロナの影響が大きいため、再び安定感の高い実需向けの住宅事業、すなわち分譲マンション事業への回帰が始まっている。
こうしたことを踏まえて、2021年のマーケットはどうなるのか。マンション市場調査のトータルブレインが、11の課題と展望を打ち出している。
まずは着工見通しについて、コロナの影響で前半は前年並み、後半回復と見る。1月に緊急事態宣言が1都3県に発出されたが、今年も前半は、昨年同様、感染拡大の厳しい状況が続くと予想されるため、前年並みの2万戸台後半のペース、夏前頃からは一服感も考えられるため、後半は3万戸台前半に回復、トータルでは今年の首都圏のマンション着工戸数は5.7~5.9万戸程度と予想。エリア的には、販売が順調な郊外で着工数の伸びが期待される。しかし、昨年着工済み未発売の販売材料も滞っているため、着工調整の可能性があることに加え、コロナの状況次第の面もあり、不確定要素は大きい。
着工戸数を5.8万戸程度と仮定すると、供給材料は4万戸程度と予想される。昨年4~5月のような販売自粛が無かったとして、昨年並みの販売状況を予想すれば、4万戸に対して75%程度=3万戸前後が販売に回る。今後コロナが落ち着いてきても、価格の高止まりによる販売の長期化傾向は続くため、当面は3万戸程度の供給が巡航速度となると見ている。
問われるアフターコロナの想像力
―2021年首都圏分譲M市場の先行きを見る(下)に続く
2021/3/15 不動産経済ファンドレビュー