自主管理支援アプリ・KURASEL始動       管理会社の効率化ツールとしての利用増える
インべリオス・川尻真也氏


三菱地所コミュニティから新設分割で設立したイノベリオスは、自主管理アプリ「KURASEL」(クラセル)の提供を昨年11月から開始した。今年2月時点で複数の管理組合による利用が始まっている。利用者の傾向やマンション管理会社・マンション管理士との連携について聞いた。

問い合わせは管理会社の管理物件が8割


 イノベリオスが提供するマンション管理アプリ「KURASEL」は、昨年7月に商品化を発表し、同年11月から無料トライアルの申し込みを開始。管理費・駐車場料金の徴収、決算書類の作成などの会計部分のほか、清掃や点検、保守などの建物維持管理についての発注、総会・理事会のサポートなどをアプリが担うことによって、マンション管理会社に支払っていた管理委託費の削減につなげるものだ。人件費の上昇による管理委託費の値上がりや修繕積立金の不足、管理組合の役員不足というマンション管理の諸課題に対して、管理会社の立場から自主管理を支援するアプリを提供するといったイノベリオスの取り組みが業界で注目を浴びた。アプリの利用料金は1管理組合当たり月額3万5000円(税別)で、総戸数200戸以上の管理組合は月額5万円(税別)と設定し、管理会社に委託するより年間200万円ほどコスト削減が可能という試算を同社は示した。
 問い合わせ件数は、昨年秋は1カ月当たり50件ほどであったが、今年1月には100件ほどと、反響数が倍増している。当初のイノベリオスの予想としては、マンション管理会社の管理物件の方が自主管理マンションより圧倒的に数が多いため、管理会社に委託している管理組合からの反響が多いと見ていたところ、やはり想定通りでマンション管理会社への委託している管理組合が80%超、15%ほどが自主管理の管理組合となっている。築20年くらいのマンションが多く、小規模から200戸超の大規模マンションまで偏りなく問合せがきており、平均すると1物件約60戸の規模だ。
 今年1月下旬から2月中旬時点で利用開始物件は3物件。このうちの1つは長谷工コミュニティが管理する新築マンション「ブランシエスタ飯田橋」(総戸数41戸)。ほかには総戸数113戸の物件も2月に利用を始めた。これら3物件についてはアプリの稼働前にイノベリオス側からの大手管理会社を中心に商談を持ち掛け、利用契約に至った物件だ。

管理会社の業務軽減ツールとして


 管理会社の管理委託マンションの場合、アプリはどう活用するのか。マンション管理会社の業務の軽減策が主目的のようだ。物件担当のフロントはアプリの利用申請の際の登録情報の入力を担い、その内容を管理組合の理事長がチェックし、二段階認証を行う。フロントによる総会・理事会の支援は継続する。つまり、アプリは管理業務のツールとして利用するケースである。今年2月中旬時点でアプリ導入を決めている中小規模の管理会社が受託している物件でも、管理会社の業務軽減策としてアプリを使う想定をしている。
 イノベリオス・カスタマーサポート部長・川尻真也氏は、「管理会社側の業務フローの見直しやビジネスモデルの変革の必要性からアプリを利用してもらえるのではないか」と期待を語る。最近の銀行業務の縮小で、通帳機を長時間利用したり、支払の指示や名義変更を一度に大量に窓口に持ちこむ管理会社は銀行側に煙たがられる存在であり、次第に銀行が受け入れなくなる時代がくるのではないかとみており、支払などの会計をアプリ上で行うことに魅力を感じる管理会社は増えると予想する。
 三菱地所コミュニティ内部でも、数百人規模の会計担当者の人員を抱え、労力とコストをかけている現状からKURASELを使った効率化への期待があり、社内で勉強会を開催したという。
 さらに、マンション管理士に対してもイノベリオス側からの連携を求め、マンション管理士の団体・勉強会への説明をすでに実施し、パートナー契約に至った管理士が数十名いる。アプリを導入して自主管理に移った場合の登録情報の入力作業、理事会・総会への助言サポートなどをマンション管理士に期待しており、マンション管理士側もビジネスチャンスとして前向きにとらえ、管理士個人のブログでアプリを紹介するケースがみられる。

OCRによる自動計算機能の実装も視野に


 アプリは常にユーザーの声を取り込んで改善をしていくものという認識をイノベリオスは持っている。まずは、使いやすさや手間を軽減できる改良を盛り込み、基盤を固めたいという方針だ。現在、追加機能として実装したいと考えているものは、アプリで写真撮影したものをOCR(光学文字認識)により数値・文字化する仕組みだ。例えば西日本エリアには各戸の水道料金を管理組合が請求している物件がある。物件全体の水道料金の請求書が1通だけ管理組合にくるため、管理組合が各戸のメーターの数値を見て、料金を計算し各戸に請求するケースがあるという。こういった手間を削減するためにアプリ上で写真の画像から数値を読み取り、自動計算したものを再度、人間の目で確認することが可能なら省力化につながる。同様の例で紙ベースの所有者変更届の画像から文字を読み取り、データ化することも可能ではないかと同社は考えている。
 自律的な組合運営のためにKURASELが活用され、資金的な改善につながることや、管理会社に任せきりになっていた管理業務を管理組合側が担うことでやりがいにつなげたいとするイノベリオス。今後、資産価値の向上やコミュニティ形成に資する機能もアプリに必要になってくるのではないかと同社はみている。

月刊マンションタイムズ 2021年3月号

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