国交省、マンション標準管理規約の改正に着手② 配管更新、規約規定で修繕積立金の拠出も可能に

 国交省は標準管理規約の改正案に、専有部と共用部にある配管などの設備の一体更新に関する規定を盛り込んだ。専有部を単独で改修するより費用が軽減される場合に一体的に工事を行うことも考えられるとし、一体更新が可能である点や修繕積立金の扱いを明確にした。専有部の設備更新は各区分所有者が基本で、費用負担の大きさなどから更新の足並みがそろわず、マンション全体の劣化につながりかねない事態にもなっている。改正案により、マンションの長寿命化に新たな道筋をつける。 

 標準管理規約21条では、第2項で「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」としている。コメントには、対象となる設備は「配管、配線等」と規定し、さらに「配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである」と、基本的に専有部の更新は区分所有者の負担となるとしている。 

 改正案は、コメントで「共用部分の配管の取替えと専有部分の配管の取替えを同時に行うことにより、専有部分の配管の取替えを単独で行うよりも費用が軽減される場合には、これらについて一体的に工事を行うことも考えられる」と追記し、共用部と専有部の配管を一体的に更新する方法にお墨付きを与える格好となった。一体更新を実施する場合はあらかじめ長期修繕計画で専有部分の配管の取替えについて記載し、工事費用を修繕積立金から拠出することについても規約で規定するよう記載。手法の乱用にもくぎを刺している。一体更新より前に更新した区分所有者への補償についても留意するよう求めた。 一体更新をめぐっては、2016年に給排水管やガス管の更新、洗濯パンの設置、浴室のユニットバス化などの工事に修繕積立金を充当した管理組合を相手取り、区分所有者が修繕積立金の目的外使用であるなどとして工事の実施を決めた総会決議の無効を求める訴訟が起こり、最高裁まで争われた経緯がある。2017年3月に東京高等裁判所が区分所有者の請求を棄却した判決で確定したものの、「この判例をもとに一体更新の実施やその工事費に組合会計を充当できると解釈すべきではない」との見方もあり、運用が統一していないのが現状だ。改正案により工事への合意形成も進みやすくなるとみられ、再生や長寿命化への取り組みの推進が期待される。 

 改正案は1月末に開催した「マンションの新制度の施行に関する検討会」で提示され、委員からは「一体更新について位置付けてもらえたのは今回の改正が初めてではないか。この問題の改善のきっかけになると歓迎したい」(川上湛永・全国マンション管理組合連合会顧問)、「区分所有法や現行の標準管理規約での規定があるものの、実際の管理の実情に照らすならば今回の改正の記載が必要だろう」(鎌野邦樹・早大法学学術院教授)など前向きな受け止めが続いた。ただ「補償については、専有部のリフォームで風呂やキッチンだけ更新して配管は工事をしていないケースもある。キッチンをリフォームした人に、配管を更新するためにキッチンの取り外しを求めるとトラブルになることもあり得る」(中野谷昌司・マンション計画修繕施工協会常務理事)など、補償の条件整理を明確にするよう求める声や、改正案を拡大解釈し、一体更新の必要性を満たさない工事にも修繕積立金が充てられないよう求める意見も挙がった。

月刊マンションタイムズ 2021年3月号

マンションタイムズ
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