下落は年前半、後半はコロナ落ち着き持ち直し鮮明に
国土交通省は23日、2021年1月1日時点の地価公示(調査地点=2万6000地点)を発表した。全国の地価は全用途平均で前年比0.5%下落、住宅地は0.4%下落、商業地は0.8%下落となり、全用途平均は2015年以来6年ぶり、住宅地は2016年以来5年ぶり、商業地は2014年以来7年ぶりに下落に転じた。
住宅地では新型コロナウィルスの感染拡大による影響を受けて下落となった。ただし住宅ローン減税拡充などの施策や、低金利の継続もあり、リーマンショック後の09年・10年地価公示と比較して落ち込みは小さかった。商業地では店舗やホテル需要が激減した影響が大きく、特にインバウンドで活況を呈していた大阪や東京の繁華街の落ち込みが大きい。
3大都市圏の住宅地の地価は0.6%の下落(前年調査1.1%上昇)で、東京圏が△0.5%(+1.4%)、大阪圏が△0.5%(+0.4%)、名古屋圏が△1.0%(+1.1%)。3大都市圏の商業地は1.3%の下落(5.4%上昇)で、東京圏が△1.0%(+5.2%)、大阪圏が△1.8%(+6.9%)、名古屋圏が△1.7%(+4.1%)。
この1年の地価動向を都道府県地価調査との共通地点における半年ごとの変動率でみると、前半(2020年1月1日〜7月1日)は住宅地・商業地ともに地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)を除き下落となったが、後半(2020年7月1日〜2021年1月1日)は景気持ち直しの動きが広がり、大阪の商業地を除き横ばいあるいは若干の上昇に転じている。上昇地点の割合は全国的に減少し、3大都市圏では住宅地の60%、商業地の69%の地点が下落した。一方地方圏では、地方4市が住宅地・商業地とも8割超の地点で上昇した。
東京23区の商業地は、2.1%の下落(前年は8.5%の上昇)となり、全ての区で上昇から下落に転じた。下落率が大きかったのは、台東区(△4.0%)、中央区(△3.9%)、新宿区(△3.1%)など、東京を代表する繁華街や歓楽街があるエリア。東京都で下落率が最も大きかった地点が、並木通り沿いの「銀座八番館」(銀座8-6-20)が所在する地点で、12.8%の下落となった。
23区の住宅地は港区と目黒区がわずかに上昇(いずれも0.3%上昇)したほかは、全ての区で下落に転じた。両区の上昇はコロナの影響が小さい高所得者層が住宅需要の中心だったことから、他の区に比べて相対的に多くの上昇地点が見られた。区別では練馬区が0.9%下落と都区部では最も下落率が大きく、特にバス便エリアで下落した。続いて中央区が0.8%下落となったが、これはマンション素地のライバルとなるホテル需要が減退したことが影響した。
銀座エリアは地価下落、目立つ路面空き店舗
東京の商業地では銀座地区の下落が目立った。東京都の下落率一位となったのは銀座8丁目の「銀座八番館」。前年の地価公示では4.5%上昇していたが、今回は一転12.8%の下落となった。並木通り沿いの同ビルを含めて周辺は銀座地区を代表するネオン街だ。周辺は空き店舗が目立つ。銀座8丁目にある不動産仲介店舗に話しを聞くと、「銀座7・8丁目に限らず、中央通り沿いやみゆき通り沿いの店舗すら空きが目立つ。これまでは空きがでれば、すぐにどこかが手を挙げる状況だったが、まだそうなってない。これまででは考えられなかった状況だ。空いてからすぐ改装に入るビルも少ない」と肩を落とす。また別の銀座6、7、8丁目を中心に700件以上の店舗ビルを管理する不動産会社によれば、「本格的な回復はまだかもしれないが、昨年の一時期に比べれば反響は戻ってきている」(同社支店長)と話す。
半年前の都道府県地価調査との共通地点となっている「明治屋銀座ビル」。今回の地価公示では7.9%の下落となったが、年の前半は△5.3%、後半は△2.7%となっており、後半は下落幅が縮小している。
銀座八番館(並木通り沿い)。周辺路面店は空きが目立つ 並木通り沿いのクラブ街の空き店舗。シャッターが閉まり改装の様子もない(第四ポールスタービル)
有楽町小川ビル(△10.3%)周辺。ガード脇の大衆酒場が立ち並ぶエリアも大きく下落
明治屋銀座ビル(中央通り沿い)。年後半は下落幅が縮小している
並木通り沿いの空き店舗