特集 東日本大震災から10年・被災3県で進むコンパクトシティ再開発

◎被災3県で進むコンパクトシティ再開発―各地の主要駅を中心に行政と企業が連携

 東北地方の主な被災地となった3県を始めとして、主要駅を中心にコンパクトシティを形成するまちの再開発事業が進展している。行政と民間企業らが連携して、中心市街地の活性化で関係人口を増やし、復興の一歩先を見据えた持続的な競争力のあるまちづくりに各地で取り組んでいる。

 宮城県では、仙台市が「せんだい都心再構築プロジェクト」を推進。高度な都市機能の集積を目指して都市開発の機運を醸成している。JR仙台駅周辺では、地元から「これまで栄えていなかった」といわれる東口エリアでも、施設開発が相次いでいる。

 仙台駅東口エリアでは先月、東日本旅客鉄道にとって首都圏以外で初のオフィスビル「JR仙台イーストゲートビル」が開業した。地上13階地下1階建て、延床面積約2万5600㎡の大規模施設に、東北地方では初めてウィーワークが拠点を開設するなど、にぎわいを創出する新たな施設とする。同施設の開業で、JR東日本グループが13年3月から推進して駅東西自由通路、商業施設「エスパル仙台東館」、ホテル「ホテルメトロポリタン仙台イースト」(282室)と続いた総事業費約450億円の「仙台駅東口再開発計画」が完了した。仙台駅東口エリアでは現在、ヨドバシホールディングスが23年春の竣工に向け、地上12階地下1階建て、延床面積約7万6500㎡の大規模再開発事業「ヨドバシ仙台第1ビル開発計画」に取り組む。JR東日本が事務所などを集約して開発する地上9階建ての物流センターも21年秋の竣工を予定。グループ企業の事務所などを集約して新たに生まれるスペースもあり、エリアの継続した活性化を目指している。

 JR東日本グループは、営業管内では仙台エリアを首都圏に次ぐ都市圏として開発事業でも力点を置く。3月中旬に、仙台駅から1駅の長町駅徒歩1分の好立地で、首都圏以外では初の商業施設併設型賃貸住宅「リエットテラスあすと長町」(90戸)が開業を予定。2月末時点で「約7割の居室で入居申し込みが入った」として、高い利便性で順調な稼働を見込む。

 岩手県盛岡市では、JR東日本グループがJR盛岡駅西口のJR社員寮跡地で4月に、賃貸マンション(88戸)に着工する。盛岡市との地方創生に向けた連携協定に基づく事業で、「地元での雇用創出から関係人口が増加して、移住定住を促進する」ことを目的として、若い世代に向けて駅前の利便性がある住宅を提供する。事業を推進するJR東日本は㈱ジェイ・エス・ビーと連携し、JR秋田駅を中心にコンパクトシティ化する再開発事業の市街地活性化に取り組んだ。秋田市の住宅地は20年9月の地価調査で20年ぶりの上昇に転じており、秋田駅周辺でも活性化に期待が集まる。

 盛岡市では、市独自の計画「中心市街地活性化 つながるまちづくりプラン」を策定し、玄関口となる盛岡駅周辺エリアなど4つの市街地エリアの連携を意識した活性化を進める。公共施設の集まる盛岡城址公園周辺エリアでは、24年開業を目指す地上3階建ての複合商業施設のほか、地上22階建ての超高層マンションの建設も含めた再開発事業「monaka」プロジェクトを推進している。盛岡市は特色あるまちづくりで、持続的な発展を目指す。

 福島県いわき市のJRいわき駅南口では、商業施設とホテルが開業する新たな駅ビルと周辺で進む超高層マンションを核とした再開発事業を連動した動線で結び、駅を中心としたまちづくりを推進している。いわき市は、「いわき市中心市街地活性化基本計画」を策定して、いわき駅南口側に中心市街地の活性化を図り、まちなか居住の促進とにぎわいの創出を進めている。

 再開発事業「いわき駅並木通り地区第一種市街地再開発事業」には、フージャースコーポレーションと日本エスコンが参画。約1・1haの敷地に地上21階建て、約220戸の超高層マンションを開発する。フージャースは、「シニアが使いやすい設備・仕様をオプションで選べるシニア住宅も併設する。高齢者の住み替え需要を取り込みたい」とする。近接するJR東日本の開発計画「いわき駅南口開発計画」では、地上10階建ての駅ビルを開発。再開発事業の方面へ向かうエスカレーターを計画エリア内に設置し、回遊性の高い歩行空間を形成する。駅ビルは、1~3階を近隣の住民に日常的な生活をサポートする物販・飲食などの店舗を開業する商業施設、4~10階を地域の顔にふさわしいホテル(227室)として開発に取り組み、新たな人の流れから地方創生を目指していく。(日刊不動産経済通信)

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