シリーズ;東京「人口減」をどうみるか② デュアルライフ実現への課題 ーリクルート・住まいカンパニー 笠松美香氏(下)
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コロナ禍により東京都の人口は昨年8月以降、7ヶ月連続で減少が続いており、他府県への転出超過も7ヶ月連続となっている。こうした人口の動向が賃貸住宅市場にどのような影響を与えているのだろうか。リクルート住まいカンパニー「SUUMO」副編集長の笠松美香氏にコロナ禍における賃貸住宅市場と、国が推進しようとしているデュアルライフ(二地域居住)における課題や展望についてきいた。

(東京人口減をどうみるか①に続く)

―リクルート住まいカンパニーでは毎年「トレンドワード」を発表している。2018年のワードはデュアラーだった。日本語に訳すと「二地域居住」となるが、このコロナの後の二地域居住はどのような可能性があるか

笠松氏 二地域居住は引き続きやりたい人が増えるとみている。当社が行った、複数拠点生活に関するユーザーの意向調査によると、2018年は「デュアルライフに関心がある」と答えた人が14%だったのに対し、2020年に行った同じ調査では実に27.4%の人が「関心がある」と答えた。1年間でおよそ2倍となり、確実にニーズは増えたと実感している。2019年末には、当社はトレンドワードに「職住融合」を発表した。まだ当時はコロナでなかったがテレワークが想像以上に浸透しつつあり、その後コロナ禍でも二地域居住のようなこと、例えばワーケーションみたいなスタイルの人がちらほらでてきた。段々身近になってきているのではないか。それに加えて国も進めようとしているのが副業の推進で、例えば2つの居住地にそれぞれ仕事を持つとか、なんらかの社会的な接点を持つことが推奨されているのは追い風でもある。

リクルート「SUUMO」笠松氏

―SUUMOでの閲覧数は、三浦半島、千葉県館山、富津などでコロナ禍で増えたというが

笠松氏 イメージとして2拠点目ということで、気候であるとか自然環境であるとか憧れをもって検索をしているのだと思う。しかし調べてみたところで自分の条件に合う物件がない。人の流れができるほど、現地には受け入れられる住宅が少ないということだ。三浦にしても逗子にしてもその地域の人気エリアは出るとすぐに売れてしまうような状況だ。一方で地方ならではの問題として空家も結構な数がある。こうした物件は一般が目にするマーケットでは公開されにくい。オーナーがよその人に売ることを快く思わないこともある。そのため実態と表れてくる数字が異なる部分も多い。そもそも建物が古い物件や宅地ではない土地にはローンが付きにくい。全額キャッシュで、となると若くて身軽な人には、物件が仮に出ても簡単に買うことができない、色々クリアすることが多い。

―デュアラー意向者の倍増について

笠松氏 そもそも二地域居住をしたい人が倍増したということは過去にはなかったことだ。ただ実際に動き出している人が少ないのは、まだ大手をはじめ各企業が今後の働き方について明確な方針を出していないため。恐らくいまのテレワークを推奨するのが大半ではないかとは思うが、将来にわたる決断のタイミングがまだで、サイトで検索しながら移住とか二地域とかの漠然としたイメージを持っているという状態だろう。

―国は二地域居住を推進しようとしているが、課題は何か

笠松氏 国はここ数年「関係人口創出」を推進しようとしている。ふるさと納税も、ある種の関係人口創出のための施策だ。二地域居住については、リクルート住まいカンパニーは過去様々な調査や提言を行ってきている。実現させるには「副業」が実際に普及することが一番大事。転職しなくてもテレワークが普通になれば仕事を持っていくことができるし、現地で副業もできる。デュアルライフで難しい点は子供の教育だ。小学生になると授業を欠席する形になる。今後オンライン教育が進み、どこにいっても教育を受けられるとなれば大きく前進するのではないか。最後に行政サービスに対するフリーライドの問題。二拠点は実態にともなった納税をどうするかが課題となる。ふるさと納税以外にスムーズに納税できる仕組みがあれば、より不平等のないデュアルライフが実現できるのではないか。 

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