クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)は20年第4半期(4Q)の東京都心5区におけるグレードAオフィスの需給動向を公表した。延床面積3万㎡以上のビルが調査対象。募集賃料は前期比1・95%減の3万7864円、空室率は1・13㌽増の4・22%と、他社の調査結果と同様、コロナ禍で需給が緩む傾向がより鮮明になった。同社の調査基準によると、今回の空室率は08年9月のリーマンショック時点の4・06%を上回る水準だという。
コロナ禍で企業の資金繰りや雇用環境が悪化するとともに在宅勤務などの働き方が広がり、空室増加と賃料低下の圧力が強まっていると分析している。都心の空室率をエリア別にみると、オフィスの開発・供給が活発な港区が前年同期比3・49㌽増の6・0%と5区で最も大きく上昇した。このほか新宿区が2・88㌽増の4・53%、渋谷区が0・34㌽増の2・89%となった。新宿区には景気悪化の影響を受けやすい中小企業や営業支店、渋谷区にはリモート勤務を採り入れやすいIT企業が多く集まることが空室率の上昇要因とみられる。一方、千代田区は1・97㌽増の2・86%、中央区は1・39㌽増の1・9%と他の3区に比べ空室率上昇は限定的だった。
より好条件のオフィスなどに移る企業が増えているほか、移転費用を抑えたい企業らが居抜き物件を求める需要も強いという。C&Wは就労場所が自宅や自宅以外のサードプレイスに分散する傾向が強まると予想。仮にパンデミックが長引いた場合、都心5区のグレードAオフィスの空室率が今年半ばに6%台に到達し、23年にかけて8%台に近づくと展望している。(日刊不動産経済通信)