私募ファンド市場は21.1兆円に拡大~三井住友トラスト基礎研の調査から~
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 三井住友トラスト基礎研究所がまとめた調査によると、2020年6月末時点の不動産私募ファンド市場規模(運用資産額ベース)は推計21.1兆円だった。前回調査の2019年12月末時点と比べ約9000億円増加し、増加ペースは前回調査時とほぼ同水準を維持。新型コロナウイルス感染症拡大の環境下においても国内不動産私募ファンドの市場規模の拡大が継続している。ただ、投資家の投資意欲については「変化が無い」が依然として過半を占めるものの、「低くなってきている」との回答が大幅に増えている。プロパティ別に見ると、国内・海外投資家ともにホテル、商業施設に対する投資意欲減退が顕著。また、今後1年以内に組成予定のファンドとして、「オフィス」「住宅」を選好、「23区」「首都圏」割合が増加、低LTV化の傾向が見られ、レンダーの融資態度の厳格化や不動産価格下落に備える運用会社が増加している結果となった。同調査は年2回アンケート方式で実施し、47社の不動産運用会社から回答を得た。

 デット資金の調達環境に関しては、「普通」が29社で最多だが、「緩い」が15から6社に減少、「厳しい」が3から10社に増加。前回調査時点からの環境変化として、「レンダーの検討範囲(エリア・タイプ)の縮小」「基準金利からのスプレッドの拡大」の回答が多く、「特に変化はない」を上回った。レポートでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により不動産私募ファンドのデット資金調達環境は全体として悪化傾向にあり、特に対象不動産の属性に応じてレンダーの融資姿勢が厳しくなっていると感じている運用会社が多いと推察している。
 エクイティ投資家の投資意欲は「変化はない」が65%で過半を占めるものの、「低くなってきている」が33%へ大幅増。投資家属性別の投資額は、すべての投資家属性で「横ばい」が過半だが、国内地方銀行と国内大手銀行などで「減少」との回答が目立ち、国内地方銀行は36%が「減少」と回答した。
 プロパティタイプ別の投資額は、国内投資家・海外投資家ともに「商業施設」「ホテル」で「減少」が過半。
 現在運用中のファンドについて、運用資産残高に占める物件タイプ別の投資割合は、「オフィス」「物流」で計62.8%を占める。同様にエリアは「東京23区」「首都圏」で計66.4%、「近畿圏」まで含めると86.1%と大部分を占めることがわかった。
 今後1年以内のファンド組成については、「オフィス」「住宅」選好傾向が鮮明になり、「23区」「首都圏」の割合が増加、LTV比率は71%から59.4%と低LTV化が顕著になった。
 新型コロナウイルス感染症拡大後の投資方針について、回答者の半数以上が変化があったと回答。方針の変化として、「取得価格目線の低下」「投資対象の範囲縮小」「LTV水準の低下」の回答が多数を占めた。

2020/11/5 不動産経済ファンドレビュー

コメントをどうぞ
最新情報はTwitterにて!

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめ記事