特集;コロナ禍で変わるリテール市場①小売業の閉店増加、大手の寡占化顕著に   ―米国発EC企業や横丁など新業態が台頭 須賀クッシュマン&ウェイクフィールド、エグゼクティブディレクター兼リテールサービス部門統括責任者

新型コロナウイルスの感染拡大で都市部を中心に小売り業への悪影響が広がっている。2度目の緊急事態宣言が発出され、戻りつつあった街の人出も再び鈍化。EC化や実店舗削減など構造転換の機運がさらに高まった。実務者の視点を3回シリーズで紹介する。

 クッシュマン&ウェイクフィールド、エグゼクティブディレクター兼リテールサービス部門統括責任者 須賀 勲氏                     

 ―緊急事態宣言が再発出された。市場への影響は。
 須賀氏 今回の宣言は人の流れを大きく制限する内容ではなく、それだけに実効性や市場への影響を見通しづらい。昨春の宣言下では飲食や衣料系小売店の売り上げが大幅に落ちたが、6月には多くの店が前年比で8割程度まで実績を戻した。昨秋以降はGoToトラベルキャンペーンなどの影響もあり街に人出が増えた。ただ食品や日用雑貨を扱う郊外型店舗などが好調な一方、都市部のファッションビルなどの業績は不調で、業態と地域の格差が鮮明になっている。
 ―短期の市況をどう展望する。
 須賀氏 当面は第3波の影響で一部の業種に影響が出る。人々の働き方と生活様式が変わり、消費支出の意識も変化した。それらは感染前には戻らないという前提で店舗運営などの戦略を考えていく必要がある。
 ―アパレルはコロナ禍以前から苦境だった。
 須賀氏 店舗と商品の供給過剰やEC市場の拡大といった複数の要因で実店舗の収益が上がらない状況だ。百貨店や商業モールなどに入る店舗の閉店・廃業は今後も増える見通しで、東京都心では一等地を除き店舗の賃料も低下基調になりそうだ。

 ―店舗の機能と役割はどう変わるか。
 須賀氏 小売りはホテルなどと違い物流網さえ機能していればオンラインで収益を上げられる。小売り事業者はECのプラットフォーム整備に力を入れていて、実店舗は展示と交流の役割が強まっている。実店舗を減らしつつECの機能を持つ核店舗を要所に置くといった「OMO」(オン・オフ融合)の流れがこの先も続く。そこには大きな投資が必要になるため、事業者の資本力の差がはっきりしてくるだろう。
 ―EC市場は米国が一歩も二歩も先を行く。
 須賀氏 米国ではネットで注文し職場付近などの実店舗で受け取る「BOPIS」(バイオンライン・ピックアップインストア)が普及し、商品の受け取りや展示に特化した店舗が都市部に増えている。欧州の都市にも波及しつつあり、やがて日本にも入ってくるだろう。米国ではアパレルの「エバーレーン」や「ボノボス」、寝具販売の「キャスパー」などのDtoC(メーカー直販)企業が台頭している。個人的にはフィットネス事業の「ペロトン」に注目している。
 ―米国では数年前から実店舗離れが深刻だ。
 須賀氏 EC化の余波で19年に9000もの店舗が閉店したと聞く。コロナ禍もあり20年は2万5000店が閉じるとの予想もある。母数は分からないが相当な数だ。商業モールの核店舗の跡地にアマゾンが物流拠点を出すといった事例もある。大手デべなどが積極的に手を打っており、日本にも同じことが起きる。
 ―日本の高級小売り市場をどう展望する。
 須賀氏 すでに飽和状態だ。富裕層の観光やサービス系の消費が高級ブランドに振り替えられ足元では好況だが、訪日客の需要なくして成長は困難だ。今後伸びるのは中国やミレニアル世代向けの市場だが、それらも勝ち負けが分かれる。ティファニーがLVMHグループの傘下に入るなど大手の寡占化が進んでいる。大手の傘下に入る企業と、変化に対応できず衰退する企業に二分されるだろう。


 ―生活密着型スーパーには将来性がありそうだ。
 須賀氏 高級小売りほどではないにせよ競争は激しくなる。勝ち組の3~4グループや地域の需要に合ったニッチ系の店舗が残る。高価でも良い物を求める層と安さを追求する層に分かれ、そのことが企業の勝敗に反映される。特長のないアパレルなどは生き残れないだろう。一方で日用品を売る店は地域の生活需要に支えられており、大企業に取って変わられにくい。
 ―全国で百貨店の閉店が相次いでいる。
 須賀氏 地方での衰退が顕著で、店舗数はピークだった91年の6割程度になった。競合の増加や少子高齢化など構造的な問題で大手さえも苦境だ。都心の旗艦店以外は消えていく公算が大きく、その跡地にどんな業態が出店してくるか注目している。
 ―公園と店舗を融合させる動きがある。
 須賀氏 渋谷の宮下公園や名古屋の久屋大通り、札幌の大通公園などが成功している。17年の都市公園法改正でパークPFIが相次ぎ事業化され、コロナ禍での屋外志向にたまたま合った。繁華街などに適地があれば普及しそうだが、主流にはならない。ただ市街地再開発に公園や商業をどう組み込むかという視点は重要になる。大阪の「うめきた2期地区開発」には広大な公園があるが、店舗も開放型が人気だ。日本では門前町や商店街など独特の小売り形態が発展してきた歴史があり、昨年には複数の横丁業態が大成功した。従来型の商業施設開発は完全に曲がり角を迎えている。時代に合った新鮮な業態を世界中から発見し、不動産スペースの有効活用につなげていきたい。(日刊不動産経済通信)

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