マンション管理の未来56 トップインタビュー ナイスコミュニティー社長 新井貴己氏(上)
ナイスコミュニティー新井社長(月刊マンションタイムズ)

超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化に加え、管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は長期修繕計画の作成を基軸にマンションに関する重層的なサービスの提供に取り組むナイスコミュニティーの新井貴己社長に重点的に取り組んでいる課題や今後の事業展開などを聞いた。

エントランス改修に木材利用を

健康環境を意識したサービス開発を目指す

自社社員が一時対応 ノウハウ蓄積を強みに

――マンション管理事業の課題と戦略について。

 新井氏 高齢化社会を迎えた中でマンションストックについても老朽化しているものが出ている。大規模修繕工事で対応してきたが、3回目の修繕期になると配管工事が加わる。場合によっては建替えを視野に入れて考えなければならないだろう。グループ会社であるナイスが1978年に開発した東京の中野坂上の2物件は、恵まれた立地にあったことも幸いし、建替え事業に成功した事例だ。建替えの要望が管理組合から出た場合にはグループや協力会社と連携して対応する体制を整えたい。

 また、地震や台風などの天候被害にもしっかり対応していく必要性を感じている。当社グループは地震に強い家づくりをテーマとしており、免震マンションや耐震強度1・25倍以上のマンションを提供してきた。住民に引き渡された後、防災意識をどのように住民に持ってもらい、防災活動に取り組んでもらうかが課題ではないかと思っている。当社は創業当初から「保全工事部」という部隊を組織してきた歴史があり、自社社員による外観目視点検や小修繕工事の実施、大規模工事の提案・施工監理を行ってきた。社員による一時対応を行うことを原則にしており、コールセンターは自社社員で対応している。管理マンションに何かあれば夜間を問わず24時間出勤して、現地確認を行う体制を作っている。この原則は当社の強みとして生かし、状況判断や関連情報の収集を迅速に行えるよう、問題拡大の防止や早期解決のためのノウハウの蓄積を社員が一丸となって取り組む体制に磨きをかけたい。

新入社員にとってマンション居住者は親世代、あるいはそれ以上の年代に当たり、居住者や管理組合とのコミュニケーションをしっかりとれるようになるために、マンションの住宅設備に関する知識の獲得や資格の取得を優先して教育するため、最初にメンテナンス部門に配属を行っている。入社から8カ月間の研修期間中は1カ月ずつのローテーションを組んで現場の各支店で先輩社員の知識を新入社員が引き継いでいく。マンションの現在的な課題に対応するためにも、今一度、社員がマンションの知識を深め対応力を高めていくことが重要だ。

 居住者の防災意識を高めてもらうための取り組みとして、イベントの実施のほか、防災備品の具体的な使い方を伝えていくことなどにより、きめ細かい支援に力を入れたい。ナイスが昨年引き渡した新横浜の新築マンションでは、居住者と共に防災に関する計画の作成に取り組んでいるところだ。

――コロナ禍におけるマンション管理への影響は。

新井氏 巡回時のマスク着用や消毒の実施、3密の回避に配慮したほか、マンションの出入り口や自動ドアの消毒、エレベーターボタンの抗菌処理等を実施した。作業員が大規模修繕工事などで住戸内に入る場合に、管理組合の要望で定期的なPCR検査を実施したケースもあった。大規模修繕工事の進捗はおおむね順調だが、一部で前年実施すべきものが翌年にずれ込んでいるものもある。しかし、すべてそれがコロナ禍に起因するものではないと考えている。

コロナの影響とは別に、最近は半導体不足によって小修繕工事ができなかったり、照明器具の納期が遅れるという影響が出ている。特に、立体駐車場のメンテナンスの際、基盤の納品が遅れるというケースは複数件発生しており、今後の影響を注視したい。

マンション管理の未来56 トップインタビュー ナイスコミュニティー社長 新井貴己氏(下)へ続く

2022/1/5 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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