3大プロジェクトがけん引する 大阪オフィス市場の今後を見る(上)
大阪駅

大阪・梅田のオフィス市場が動き始めた。3月に竣工した「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」と2024年に竣工を予定する「梅田3丁目計画」「うめきた2期」を合わせた“3大プロジェクト”が集中的に供給される。いずれも高額賃料帯でテナントを付けるのは難易度が高いと言われ、その行方にマーケットからの注目は高まっている。足元の需給環境と今後の方向性を見る。

梅田エリアで60万㎡の新規床が供給 2024年に供給集中、供給過剰とは言えず

 大阪のオフィスエリアは、新大阪から難波まで、縦に長く集積している。大阪市全体における稼働床面積は約半数がキタエリアであり、2030年までにその比率は60%まで高まると見られている。とりわけ注目を集めているのが、大阪駅周辺の梅田エリアだ。梅田は着々と時間をかけて進化を続けてきた。2004年から2008年にかけて「大阪ガーデンシティ(西梅田地区再開発事業)」を皮切りに、2022年3月竣工の「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」まで、合わせて延床が約90万㎡増床した。これに加えて、2024年に「うめきた2期」の9ha、延床40万㎡、大阪中央郵便局跡地開発の「梅田3丁目計画」が約20万㎡、JRの新駅ビルが6万㎡の計60万㎡以上が供給される。この間、オフィスストックは2004年から2021年にかけて2倍、2021年から2030年にかけて1.4倍が見込まれる。

 コロナ禍で不透明感が拭えないオフィス市況において、ここへきて静観していたテナントが動き始めている。昨年夏、秋に空きが出た梅田エリアで2022年3月から6月にかけて、次第に借りる動きの方が強まり、足元で新築のリースアップが進んでいる。梅田以外の大規模オフィスも、8月に竣工を予定する「ニッセイ淀屋橋ビル」はすでに8割強の入居が決まっている。2022年竣工物件のリースアップが順調な一方で、2024年に供給が集中する。2023年は竣工が1物件であり、その代わりに相当熾烈なテナント誘致合戦になることが予想されている。「稼働率、リースアップの進捗上はさほどネガティブなことにならないだろうが、賃料は下落圧力が高まるだろう」(山口武JLL関西支社リサーチディレクター)。ひとえにテナントの負担力が問題というよりは、オーナーサイドによる熾烈なテナント誘致競争で踏み込んでくるところが出て、それに追随するオーナーが出始める。集中的に2024年に供給されると、空室率の上がり方がきつくなる可能性もある。大量供給を見越したテナント企業は「慌てなくてもいい」と判断し、結局進捗が鈍くなる。それが実際の現象として出てしまうと、賃料の下振れ競争に拍車がかかる。

 2024年のマーケットを予測する時、2010年~2013年の大量供給期が参考になる。2011年に竣工した「梅田阪急」は、賃料水準を維持しつつリースアップに2年半かけた。2013年に竣工した「グランフロント」は、需給環境が悪い時期とも重なり、賃料が下押しされ、竣工時に2万円超で決まっていた事例もあった。大阪の空室率がピークである11.3%を記録したのもこの時期だ。足元で「サウス」の募集賃料は3万5000円が軸になっており、「梅田3丁目」はテナント候補が出てきているとはいえ、すでに3万円に近い3万円前半を受け入れ、現実的には2万円台後半で出すのだろうという声も届く。オーナー側の判断だが、2024年の新規供給物件は3万5000円が3万円になり、2万8000円に成り得るとも見られている。

 ただ、大量供給だから市況を崩すと見るのは少し早い。確かに2010年から2013年は12.6万坪が供給され、2022年から2025年も15.8万坪が供給されるが、それぞれの時期における前後10年間の供給量は年平均2万坪程度であり、必ずしも供給過剰とはいえない。JLLによると、空室率は2024年に8.8%まで上がるがその後ピークアウトし、賃料も緩やかに下がりながらも2026年に2万400円で底を打つと予想する。

3大プロジェクトがけん引する 大阪オフィス市場の今後を見る(下)へ続く

2022/7/25 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー

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