(提供:日刊不動産経済通信)東京建物が東京駅東側一帯で仕掛けるスタートアップ支援の取り組みが活気を帯びてきた。複数の大型開発が動く八重洲、日本橋、京橋の通称「YNK(インク)」エリアで自社ビルや解体前の施設などを活用し、起業と創業に特化したシェアオフィスを運営。食やIT、環境など多分野の事業化を後押ししている。支援拠点は9カ所に増え、圏域に集う若い企業は昨年時点で189社と4年で倍増した。XTech社と共同運営する「クロスブリッジトウキョウ」は累計41社で107億円の資金を集めるなど実績も出てきた。
YNKの一帯は江戸時代に職人や商人が多く暮らした商業と物作りに由来する街だ。そうした歴史的経緯や東京駅至近の立地などが国内外のベンチャー企業を引き付け、東京駅西側に広がる「大丸有(大手町、丸の内、有楽町)」とは異なる文化圏を形成。先端的な提携先を求める大丸有企業の受け皿にもなっている。
東建はYNK圏の「八重洲一丁目東AB」「八重洲一丁目北」「京橋三丁目東」など複数地区で大型再開発を手掛ける。そこで運営する創業支援拠点のうち8つは時限利用で、再開発ビルを好発信させる地ならしの側面もある。9施設に20社超が入居するほか、街や施設に出入りする起業家の数は年4万人以上にのぼる。同社のまちづくり推進部イノベーションシティ推進室によると「この4年に倒産した入居企業はなく、YNKの関係人口も増え続けている」という。
昨秋には日本橋の自社ビルを海外企業向けのシェア拠点「クロスブリッジグローバル」に転用。外国人の来街者が増えるなか、国際的な橋渡しにも力を入れ始めた。同推進室は「生産年齢人口が減る日本の経済を再浮上させるためにも、東京に多くの海外企業がくるきっかけを作りたい」と強調している。