割安な郊外マーケットの復調 ―首都圏分譲マンション市場を見る(上)
不動産経済ファンドレビュー

埼玉で販売数、平均単価、価格とも大幅上昇
 ー23区は全エリア単価上昇もエリアに変化

(提供:不動産経済ファンドレビュー)不動産市況を取り巻く経済環境が激変する中、首都圏の分譲マンション市場は昨年からの好調な状況が続いている。平均坪単価、価格も上昇が継続していても、初月契約率は70%を超え、マンションに対する引き合いは強い。コロナによる賃貸脱出志向の高まりと販売価格の急激な上昇を背景に、割安感を求めた顧客の動きも出始めている。2022年前半の首都圏マンション市場と今後の課題を見る。

不動産経済研究所の調べによると、2021年1~6月の首都圏分譲マンション販売戸数は、1万2716戸で前年同期比561戸(4.2%)減だった。今年前半は、ほぼ2021年と同ペースの供給で、後半も前半のペースがキープできれば、3万1000~2000戸の供給ボリュームが予想される。エリア別では埼玉が1685戸で382戸(29%)増、供給割合も埼玉13%、千葉12%と、郊外での供給シェアがやや拡大している。一方で東京23区が426戸(7%)減、前年供給が多かった神奈川県が500戸(14%)減だった。

 こうした動きは着工状況を見てもよくわかる。国土交通省によると、今年1~6月の着工数は2万5617戸で、前年同期の2万8670戸と比べて3053戸(10.6%)減っている。エリア別にみると、東京都が1万3355戸(24.3%減)、神奈川県が6515戸(9.3%減)に対して、埼玉県が3295戸(61.9%増)、千葉県が2452戸(37.3%増)で郊外部の着工が大幅に増加している。東京の大幅減に関しては、23区を中心としたマンション用地不足による着工材料不足、逆に埼玉・千葉では、販売好調を背景としたデベロッパーのマンション用地仕入れ強化による着工材料の増加が、着工の大幅増につながっている。着工増は販売増に直結するため、後半以降も郊外部での供給の更なるペースアップが予想されている。
 平均坪単価は、323万円で前年比4.4%上昇。23区以外で4~18%上昇、平均価格も6511万円で4.0%上昇した。特に埼玉は277.4万円(18.7%アップ)、5887万円(22.6%アップ)とそれぞれ上昇。大宮・浦和・川口での6000万~8000万円台の高グロス物件の供給増加の影響が大きい。千葉も213.6万円(4.9%アップ)、4727万円(9.6%アップ)に。千葉は2021年まで一貫して4000万円台前半で粘ってきたが、とうとう4000万円台後半に入った。一方、23区だけが単価が419.8万円(0.9%ダウン)、価格も8091万円(2.4%ダウン)している。その理由は、23区では供給が都心から外側へシフトしているために、結果的に平均価格が下がった。個別物件で見ると実際には価格は上昇している。

 23区の平均単価をエリアごとに見ると、2021年から今年にかけては全エリアで上昇している。コロナ禍(2019~2022年)の変動率を見ると、城南4区は31%上昇。しかも、この上昇は2022年に入ってからのものだ。2019年から2021年まで400万円前後だったものが、今年半年で517.3万円に跳ね上がった。城南の上昇理由はマンション用地不足で供給が激減し、需給バランスが抜群に良く希少性が出てきた。次いで城北5区が23.9%上昇。城北は人気がなかったため、上昇のタイミングが遅く、他エリアを追いかけて上昇している。逆に城西3区は0.8%上昇でほぼ横ばい。割安な練馬区の供給増加が影響し、平均すると薄まった。同じことが城東5区にも言え8.8%上昇。単価水準の高い江東区の供給が減っている。割安な江戸川区の供給が増えているので、価格上昇が抑えられている。
 エリア別の供給シェアを見ると、2010年から2021年までの平均で城南4区と城東5区は供給シェアが高い。城南は20%弱から25%の間、城東は25%強で推移した。ただ2022年はそれぞれ9.2%、18.7%と大幅にシェアダウンしている。その要因は、城南はマンション開発用地不足、城東は江東区・湾岸大型物件の供給減。有明や豊洲がひと段落したため、大型のマンション用地が出てこない。これによって、供給が減ってきている。一方で、シェアアップしたのが城西と城北。城西は練馬区がけん引、城北は工場や倉庫跡などマンション開発用地が多いので当分はシェアが上がっていくと見られている。その他エリアでは、都心3区は中央区の再開発(勝どき、晴海、月島)の大型再開発タワーがシェアを上げている。超都心はあまり変化していないが、今後は港区の再開発大型物件の供給が増加するため、シェアは上昇する可能性がある。
 初月販売率は、去年の好調が継続し、1~6月の月平均成約率は72.1%。結局、売値は上昇しているのだが、コロナによる持ち家志向の高まりは継続。供給戸数が伸びないことによる良好な需給バランスと、超低水準の住宅ローン金利も継続。ロシアのウクライナ侵攻や中国のロックダウンによる工場閉鎖など経済状況は変わっているが、マンション市場を取り囲む環境は一切変わっていない。そのため、売れ行きもキープ出来ている。販売中在庫も順調に減り、クリアランスも進んでおり、完成在庫については、横ばい推移だが、これだけ売値が上がってきても、積み上がる気配はない。

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