大阪・梅田のオフィス市場が動き始めた。3月に竣工した「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」と2024年に竣工を予定する「梅田3丁目計画」「うめきた2期」を合わせた“3大プロジェクト”が集中的に供給される。いずれも高額賃料帯でテナントを付けるのは難易度が高いと言われ、その行方にマーケットからの注目は高まっている。足元の需給環境と今後の方向性を見る。
3大プロジェクトがけん引する 大阪オフィス市場の今後を見る(上)より続く
大阪駅前に4.5haの都市公園を整備 新駅、新線の開通で高まるポテンシャル
3大プロジェクトのうち「うめきた2期」は、街の中央部分に4.5haの都市公園が整備され、南街区と北街区に分かれる大規模再開発事業だ。都市施設の機能を見ると、商業施設には大型温浴施設や世界から人々を呼び寄せるような関西のミシュラン級シェフによるフードマーケットが整備される。オフィスのほか、分譲棟(計1200戸)に加えて国際会議が可能なMICE施設、ホテルもヒルトンの最上級ラグジュアリーブランドを含め3棟・1000室を超える多様なホテルが、2025年に開催が決定している大阪・関西万博に間に合う時期までにオープンする。うめきた2期の開発に合わせて、2023年春に「うめきた地下駅」が開業、鉄道新線である「なにわ筋線」「なにわ筋連絡線」「新大阪連絡線」も予定されており、関空や将来のリニア新幹線と大阪梅田へのアクセスが飛躍的に向上する。うめきた2期はスーパーシティ特区の重点エリアに指定を受けている。「これを追い風として、今後、同地区がスタートアップの育成に新しい産業を生み出す場として、ポテンシャルを高めていく」(谷口丹彦・阪急阪神不動産取締役不動産開発事業本部副本部長兼うめきた事業部長)。
海外投資家も市場の潜在力、成長期待を評価
需給ミスマッチも新たな人とカネの流れ出る
市場の潜在力、成長期待も手伝って、大阪のオフィス市場には海外投資家からの熱い視線が注がれている。円安の状況、有利な融資環境がある中で、さらに投資活動が活発化することが考えられるが、結果として、立地の良い物件に投資家が殺到して価格が上昇している。年内に100億円超のBクラスビルでクロージング済が2本あり、水面下でも複数本動いている。ただ、投資案件が出てこない。出てきても、70年代から90年代に竣工したビル、淀屋橋南部から本町にかけてのビルをせめぎあって取得する。流動性が圧倒的に低い。投資利回りが3%前半になることも多く、本町を中心に大阪では有名なビルでも、築年数を経たような物件が多い。足元で動いている物件は本町ではないが、それでも手を上げる買い手は出てくる。コロナを通じて、働き方が変わり、オフィスの使い方やあり方の見直しが進んでいる。新卒採用で新たなオフィスを確保する動きも出ており、オフィス需要に底堅さがある。投資物件が枯渇化していることは間違いなく、売り手の意識が変われば流動化もさらに進むものと見られる。
マーケットの空室率は5%近辺で拮抗し、賃料も大幅に下がっていない。「既存ビルでは歯抜け状態で空いているレベルにとどまり、館内で賃料を下げて決めようとする行為もない」(小畑大太・三鬼商事大阪支店長)。一方で、新築ビルはやや苦戦し、時間をかけて入居率を上げる状況にある。採算ベースを割り込んでまで急いで成約せずに、時間をかけるのが現状だ。「老朽化した自社ビルから賃貸への切り替え、中心部へオフィスを構える動きもある。新規ビルを作ろうとする機運もあり、作ればテナント需要を生み出す」(小畑氏)とマーケットを好意的に見通す。
梅田における大規模物件の集中供給を反映し、「2024年問題」とも言われる大阪のオフィス市場。確かに厳しい面があることは否めない。しかし、需要がついてこられるかという懸念よりは、短い期間に供給が集中することにより、一時的に需要の伸びに対してミスマッチが起きると見ることが正しそうだ。需給の解消にはある程度時間がかかるが、職・住・遊のバランスの取れた街づくりが進むことで梅田エリアの強みが増し、人とカネの新たな流れが生み出される効果は計り知れない。
2022/7/25 不動産経済ファンドレビュー