日本不動産研究所は、不動産のESG投資について不動産投資家の認識を調査したアンケート結果をまとめた。2020年4月1日時点。不動産投資家のESG投資に対する期待は、「不動産価値への影響」とする回答が最も多く、他の項目を大きく引き離し、将来的な収益性の向上を期待する声が多かった。ESGに配慮した不動産とそうでない不動産の賃料収入について、現在は「特に違いはない」の回答が8割超で最も多かったが、10年後は「1~5%程度高い」が6割超で最も多かった。期待利回りについても同様に聞いたところ、現在は「変わらない」が約8割で最も多く、10年後は「10bp低い」が4割超で最も多かった。同調査は第41回不動産投資家調査の特別アンケートとして実施され、アセット・マネージャー、アレンジャー、デベロッパー、生保、レンダー、投資銀行、年金基金など193社にアンケートし、122社から回答を得た。
ESG投資に適した不動産の賃料収入は、そうでない不動産に比べてどの程度違いがあるか、あると思うかを聞いたところ、現在は「特に違いはない」が84.3%(前年調査比0.3p減)、次いで「1~5%程度高い」が14.8%(3.3p増)で続いた。10年後は「1~5%程度高い」が63.6%(3.0p増)で最も多く、「8~10%程度高い」が18.7%で続いた。
不動産のESG投資において具体的に実践していることを聞くと、「環境性能に配慮した不動産運用」が68.0%、「働く人の件構成や快適性に配慮した不動産運用」が56.7%「環境性能に関する第三者認証の取得」が51.5%、。ESG投資に適した不動産に投融資する場合、そうでない不動産への投融資に比べてどんなことを期待しているか聞いたところ、「不動産価値への影響」が最も多く、大きく離れて「賃料単価への影響」「IRへの影響」「リーシングへの影響」と続いた。
ESG投資に適した不動産の賃料収入は、そうでない不動産に比べてどの程度違いがあるのか聞いたところ、「特に違いはない」が84.3%(前回調査比0.3p減)で最も多いが、10年後は「1~5%程度高い」が最も多く63.6%(3.0p増)。同様に賃貸事業コストの違いを聞いたところ、「特に違いはない」が49.0%(1.5p減)で最も多く、次いで「1~5%程度高い」が25.0%(3.7p減)だった。期待利回りは「変わらない」が81.1%(0.3p増)、10年後は「-10bp」が43.8%(2.4p減)でそれぞれ最も多かった。最後に不動産のESG投資がさらに普及するためにはどのようなことが必要か聞いたところ、「オーナー・テナント・金融機関・投資家等の意識改革」が31.2%(4.8p増)、「不動産価値の向上」が24.8%(0.3p増)、「国や自治体による補助・減税制度」が22.0%(2.5p減)と続いた。
回答者の属性は、国内系が90.2%、外資系が9.8%。そのうち、Jリートが23.8%、デベロッパーが13.1%、私募ファンドが11.5%と続く。投融資対象として最も中心となるアセットタイプはオフィスが最も多く43.6%、次いで「すべての複合」が22.2%だった。投融資の期間は10年以上が48.3%、5年以上~10年未満が26.3%、投融資スタンスはコアが81.0%だった。80.5%が国連の責任投資原則への署名機関、70.5%が2019年度のGRESB調査に参加している。 (不動産経済ファンドレビュー 539号 2020年8月発行)