東京都環境審議会の「カーボンハーフ実現に向けた条例改正のあり方検討会」の中間まとめが示された。東京都は「都内において戸建てを含む延べ床面積2000平方メートル未満の中小規模の建築物の供給量が年間2万平方メートル以上の事業者に対して設置義務を課す」方針であり、これに該当する大手住宅メーカー約50社が費用負担、あるいはその費用を消費者へ転嫁していくものとみられる。
一方、住宅メーカーの団体は、太陽光発電設備の導入に初期費用や投資回収に対する不安があるほか、余剰電力の有効な使い方が十分示されておらず、卒フィット後の電力買取が課題であるとし、第三者所有モデルは住宅事業者としては新築の屋根上を改変されると建物保証に影響する懸念があると指摘(2021年4月の国交省の「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」ヒアリング資料)。加えて、劣化したパネルの廃棄の問題も絡む。こうした現実的な課題について、太陽光発電の普及を推進する立場の一般社団法人・太陽光発電協会(JPEA、事務局)に話を聞いた。
今回の東京都の施策について協会としてどう考えているか
東京都は2050年ゼロエミッションの実現に向けて、2030年までの行動が極めて重要であるとし、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)する、「カーボンハーフ」を表明している。都の動きは国の目標以上だ。国は2050年の完全なカーボンニュートラルを目指す上で、2030年の中間目標として2013年比で46%削減と言っている。国と比べて都の目標は大変高い目標であり、太陽光発電を推進する我々の立場としては大賛成だ。ただし国の目標である46%削減についても高い目標だ。30年度の排出量削減目標の内訳を見ると、家庭部門で13年度比で66%削減する。業務部門は50%、産業部門は37%削減に過ぎず、家庭に大幅な削減を求めている。電力会社や民間各業界がそれぞれ勝手にやっても達成できない目標だと思う。だから国民一人一人が考え方を変えて積極的に削減に取り組んでいかないと実現できない。そうした中で東京都は先進的な取り組みしているので、協会としてもしっかりバックアップしていきたいと考えている。
新たなコスト負担だと批判も大きいが
東京都環境審議会の「カーボンハーフ実現に向けた条例改正のあり方検討会」の3回目の検討会で太陽光発電協会として意見表明をしている。この時に提出した意見は今も変わらないのでその話をしたい。まず住宅に関わるところでいうと 太陽光発電の設置費用について。設置コストはここにきて下げ止まり感が出てきたものの、従来と比較すれば確実に下がってきている。戸建てに設置するにあたって経済的メリットは十分にあると思う。そのため設置者に過度な経済的負担がかかるとは思っていない。
コストとリターンをどのようにみているか
例えば経産省の「発電コスト検証ワーキンググループ」で示された資料では、平均の発電コストは1kwhあたり17円台、17.7円との数字が出ている。ということは東京電力の一番安い単価(スマートライフS・L)である契約における深夜電力(17.78円)よりも安い。つまり、電力を調達するコストとしては太陽光は一番安い調達方法と言える。
自家消費で考えてみることだと。売電については
当然課題としては初期費用の負担だ。それと昼間は発電した分が余ってしまうから、余剰電力を売電しないといけない。ただしこれまで家庭の太陽光発電でフォーカスされていたのは売電ありきだった。「売電=太陽光の設置メリット」という認識だったが、今は自己利用の方が経済的なメリットがあるという考え方に変わってきていると思う。軸足を売電から自己利用に置き換えて、経済的メリットがあるということ。そこを十分に理解していただきたらと思う。