EV充電器の設置について様々な動きが出てきている。東京都の小池百合子知事は4月に行われた定例記者会見で、都内で建築物を新築する際に排ガスを出さない電気自動車(EV)などのゼロエミッション車(ZEV)の充電設備の設置を義務化する方針を示した。大規模なビルやマンション以外に、大手住宅メーカーが供給する戸建て住宅も対象としたい考えだが、現状ではマンションにEV充電器を設置するには法律のハードルが高く、海外に比べて日本は普及が遅い状況。EV充電器の現状や今後の見通しなどについて、ユアスタンド株式会社のマーケティング担当、デニス・チア氏に話をきいた。
事業の背景について
世界の自動車産業は脱ガソリンへ向かっている。欧州では特に顕著でメルセデスベンツもアウディもEVに力を入れている。メルセデスは2025年以降に新車のすべてをEVにすると発表している。日本でも政府目標で2030年代半ばまでにガソリンの新車販売の禁止を目指している。すでに国内自動車メーカー各社もEVに進出している。トヨタは2030年までに30車種をEVにすると発表している。EV普及が確実視されるなか、いかにスムーズに充電を行えるか、環境を整備することが大事になってくる。充電の仕方は自宅などで行う基礎充電と、目的地における目的地充電、そこに至る経路充電の3つに大別される。基本はEV充電の8割を占める基礎充電だ。当社は主に既存マンションにおけるEV充電器の導入・運用ソリューションを行っている。昨年からはマンション以外の建築物などその他の分野にも進出を開始している。
これまでの実績は
分譲マンションは首都圏中心に150棟以上の導入実績がある。地域は関東以外だと中部、関西、東北エリアなど。既存マンションへの導入は初期費用が掛かるのと、共用部の分電盤を使うので、充電器を使う人だけに費用負担する、受益者負担をどうするかが課題となる。まずEV設置の初期費用だが、これには国の補助金が使える。初期費用の負担の3分の2は補助金で賄える。そして運用面で受益者負担をどう実現するかについてだが、当社が独自に開発したアプリ「ユアスタンドアプリ」で利用者のみに課金を行うことでクリアした。充電器を使用した人だけが支払う仕組みだから総会の決議も通りやすい。
使用する機器やアプリについて
充電器を設置しただけでは、誰がどれだけ充電したかがわからない。ユアスタンドアプリを使用すれば管理者は、利用状況のほか予約の状況も把握することができるようになる。システムの中身は マンションによって自由にカスタマイズが可能。このアプリは特定の充電器やメーカーに依存しない。EV充電器の主なメーカーや日東工業やパナソニックなどだが、市販されているものであれば何を使ってもらってもOKだ。
充電設備の導入事例は
先ごろ導入した江東区・豊洲のタワーマンションだと、共用部となる来客用駐車場に設置している。このマンションに導入したアプリは充電器も来客用駐車場も同じシステムで、予約してから利用できる仕組みとなっている。充電の状況も駐車場予約も一つのアプリで完結させているから便利だ。
共用部のないところや駐車場区画全てに充電用コンセントを設置したいというマンションでも対応が可能だ。ある渋谷のマンションでは駐車場が30区画あり、2区画で1つのコンセントを共用できるよう、15個のコンセントを取り付けた。このマンションでは利用時間帯が集中することでブレーカーが落ちないよう、予約充電のシステム「マルチチャージングコントロール」を採用。仮に分電盤の電圧が60アンペアと比較的小さくても、同時利用は3台までに制限し、4台目以降は他の空いている時間帯に予約を入れてもらい、その時間帯になると自動的に電力供給がスタートする仕組みだ。