【近畿圏マンション】供給大幅増加 コロナ前の水準に回復 2022年は引き続き価格高騰のあおりで外周部が活発化 不動産経済研究所 大阪事務所所長 笹原雪恵
不動産経済研究所・大阪事務所長 笹原雪恵

前年比24.7%増の1万8951戸 コロナ前の水準に回復

2021年の近畿圏新築マンションの発売は1万8951戸、前年の1万5195戸に比べて3756戸(24.7%)増加した。上半期8373戸、下半期1万578戸であった。初月契約率は69.8%、前年(71.7%)比では1.9ポイント(P)ダウンし、好不調を分ける70%ラインを12年ぶりに下回った。特に9月と10月は大阪市部と神戸市部のタワー物件の低迷により50%台に落ち込んだ。

発売戸数と契約率をエリア別に見ると、大阪市部6525戸、71.8%(前年同期比10.3%増、1.2Pダウン)、大阪府下3901戸、70.8%(同22.9%増、3.8Pアップ)、神戸市部2442戸、60.9%(同70.1%増、11.0Pダウン)、兵庫県下2809戸、65.4%(同42.8%増、0.3Pアップ)、京都市部1528戸、74.5%(同47.2%増、5.1Pダウン)、京都府下581戸、70.7%(同67.9%増、27.0Pダウン)、奈良県208戸、83.2%(同60.3%減、7.1Pアップ)、滋賀県848戸、77.9%(同39.7%増、3.3Pアップ)、和歌山県109戸、62.4%(同42.3%減、0.5Pアップ)となった。コロナ禍の影響で大幅供給減となった2020年から反転増加し、近畿圏全体ではコロナ前の水準まで回復した。特にファミリー層の郊外・広面積需要が旺盛であり、外周部での供給増が著しかった。一方、近年増加傾向にあった1K等投資物件は21.9%増の3815戸であったが、これは2018年のピーク時(6113戸)を4割近く下回る水準である。1K等投資物件を除いた戸数は前年比25.5%増の1万5136戸で、2015~2018年と同水準である。

平均価格は4562万円で前年(4181万円)比381万円(9.1%)の上昇、㎡単価は75.1万円、同(69.1万円)比6.0万円(8.7%)上昇。平均価格は4年連続で上昇し、1991年(5552万円)以来の高値、㎡単価は9年連続で上昇し、1973年の調査開始以来の最高値を更新した。中心部の高額タワー物件が多数発売されたこともあり、単価上昇は2015年(前年比10.2%上昇)以来の伸び率であった。

注目のタワー物件が多数発売

2021年に初回売出しを迎えた注目物件は以下の通り。『Brillia Tower堂島 1期1・2次(185戸、平均坪単価623万円)』(大阪市北区、東京建物、49階建、総463戸)は世界を代表する高級ホテルとの一体型超高層複合タワーであり、初回売出しの185戸が月内完売。『ローレルタワー堺筋本町1期1~11次(155戸、同390万円)』(大阪市中央区、近鉄不動産他4社、44階建、総511戸)は駅徒歩1分の好立地と住民専用ゲーテッドガーデンで注目を集めている。『ベイシティタワーズ神戸WEST(346戸、同376万円)』(神戸市中央区、住友不動産他1社、27階建、総699戸)は神戸市の高さ規制により三ノ宮駅エリア最後のタワーマンションと言われる。『クラッシィハウス尼崎GRAND PLACE1期1次~4期4次(302戸、同241万円)』(兵庫県尼崎市、住友商事他1社、総456戸)は近年人気のJR尼崎エリア大規模として売れ行き好調。『シエリアシティ明石大久保1期1次~3期12次(384戸、同181万円)』(兵庫県明石市、関電不動産開発他2社、総810戸)は2021年中で発売戸数、成約戸数ともに最多となった。また、『クラッシィハウス京都六地蔵1期1次~3期1次(182戸、同197万円)』(京都府宇治市、住友商事他2社、20階建て、総648戸)は京都府内で最大規模。

近畿圏マンション市場動向(不動産経済研究所 大阪事務所)

2022年供給見込みは約1万8500戸

大阪市中心部の超高層は2022年も安定した供給が続く見通し。超高層、大型物件の初回売出しがひと段落した神戸市部、中心部付近に供給が戻る京都市部では大幅減の一方、京都府下、奈良県、滋賀県では初回売出し、継続物件ともに活発化が予想される。また、1K等投資物件は復調が続くものの、コロナ前の水準までの回復は困難とみられる。近畿圏全体としては、供給は前年比2.4%減の1万8500戸程度を見込んでいる。

続く単価上昇により売れ行き不振が懸念

都市部の価格高騰とコロナ禍による広面積・間数志向を背景に、郊外型ファミリーの動きは引き続き活発である。しかしながら、販売在庫数は12月末時点で4400戸と積み上がっており、続く単価上昇による売れ行き不振が懸念される。 今後の注目は、『シエリアタワー大阪堀江』(46階建、総500戸、関電不動産開発他2社)、『ブランズタワー大阪本町』(43階建、総302戸、東急不動産他3社)、『ジオタワー新町』(38階建、総190戸、阪急阪神不動産)、『シティテラス若江岩田』(総436戸、住友不動産)、『ジオ彩都いろどりの丘』(総372戸、阪急阪神不動産)、『プラウドシティ大津京』(総357戸、野村不動産)などが挙げられる。

2022/2/9 不動産経済 Focus &Research

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