管理適正化法改正の確実な施行へ一翼担う<br>みらいネットと管理計画認定制度の連携を模索<br>マンション管理センター理事長 藤田 博 氏



超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化という「二つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、6月に理事長に就任したマンション管理センターの藤田博氏にマンション管理に関する現状や今後の活動について聞いた。


ノウハウやネットワークで改正法運用に貢献
――マンション管理を取り巻く現状の認識は。
 藤田氏 建物の高経年化と居住者の高齢化による「二つの老い」への対応が待ったなしの状況にある。マンションはストックが約666万戸に上り、国民の約1500万人が居住する重要な居住形態となっている中、世帯主の半数が60歳以上、とりわけ70歳以上が17%を占め高齢化率が高まっている。今適切に対応しないとこの状況は急速に悪化する。今回のマンション管理適正化法の改正もこうした点への危機意識を踏まえたものと認識している。
 一方で、マンションは適切な管理や修繕が行われれば、安全・快適に70年から100年以上の長期間でも住み続けることができる。建物の強靭性があるので災害時に避難しなくても済むケースもあり、防犯面も含めて安全性が高いのがマンションだ。区分所有者で適正な管理や高経年化への対応が必要な点を認識し、対策に取り組むことが重要になってくる。法改正の内容や関連した制度が定着していく上では、今が一番大事な時期といえる。

――法改正を踏まえ、センターの果たす役割とは。
 藤田氏 マンションでの生活が持続可能なものとなるため、区分所有者や管理組合、行政、マンション管理士、管理会社、そしてセンターが連携して役割を果たすことが求められる。センターは我が国唯一のマンション管理適正化センターの指定を受け、これまでも情報提供や技術的支援、助言のほか、調査・研究や広報に取り組んできた。多方面からの相談に応えてきたノウハウや、蓄積した管理に係る情報、自治体や各都道府県のマンション管理士会とのネットワークもベースにし、法制度の確実な施行・運用の一翼を担っていきたい。
 相談は昨年度約8600件が寄せられた。新型肺炎に関しては、2月以降に約800件の問い合わせがあったのに加え、それに対応して総会開催に関するQ&Aを作成するなどの活動を行った。管理組合などから相談を受け、課題に対応するというポジションを積み上げてきたと思う。改正法の施行でも、管理組合など関係者の生の声への対応や解決のために、センターが積み重ねてきたノウハウや調査などの活用が求められてくる。具体的には、改正法で規定されたマンション管理適正化推進計画や管理計画認定制度の実施に必要な情報やノウハウの提供、学識経験者やマンション管理士などの関係者・団体とのネットワークの活用が想定される。ネットワークを担う立場としても改正法の運用に貢献したい。
 今回の法改正の肝は、適正化推進計画や管理計画認定制度に自治体が前向きに取り組み、これに大多数の管理組合や居住者がインパクトを受けて反応してもらい、マンション管理についての関心を高めて必要な取り組みを認識してもらうことだ。センターも持てる知見を総動員して取り組む。

改正法で管理士へのニーズも増加
管理士の役割の認知が急務


――マンション管理士に期待される役割とは。また、それに対するセンターの支援は。
 藤田氏 マンション管理の専門家として、また管理組合への中立的なアドバイザーとして管理士への期待は大きく、必要性も従前以上に高まってきている。日本マンション管理士会連合会(日管連)とも連携し、管理士の役割について認知を高めていきたい。
今後二つの老いが進んでいく中では、長期修繕計画の策定や大規模修繕工事の実施に中立的な専門家である管理士にアドバイスを求める選択肢もあるのではないか。また、標準管理規約の改定により管理組合の運営に第三者の活用の枠組みが広がったことから、管理士の活動分野も拡大している。今回の改正法でマンション管理の適正化が促進される中で、中長期的にはマンション管理士に対するニーズは増加していくものと考えている。特に区分所有者の高齢化が進むマンションや大規模なマンションでは、専門家としての管理士へのニーズは大きく、管理組合運営でより重要な役割を担うことも考えられる。2001年にマンション管理士の制度ができた当時の理念に、現実の問題状況や危機感が追い付いてきたといえる。
 一方で、管理士の仕事のレベルとニーズをどうマッチングしていくかが課題だ。センターでも資格ガイドや管理士の業務事例の紹介などの認知には取り組んできたが、改正法では管理計画認定制度の認定事務について、指定認定事務支援法人に各都道府県のマンション管理士会などが想定されていることから、この活動からも管理士の認知がさらに進むことを期待している。認定を受けるために管理士の参画が求められる事例も多くなると考えられ、日管連との連携によりそうした動きを促進したい。

――管理士の有資格者数や受験者数を増やすのも必要だ。
 藤田氏 受験者は減少傾向にあり、センターとしても危機意識を持っている。関心を持つ受験者の裾野の広がりが管理士制度を維持するためにも重要だ。センターとしてできることには限界もあるが、専業として携わる方以外にも、リタイア後に管理に貢献したいケースや、副業的に資格を活用したいケース、管理業務主任者でも第三者管理など管理業務の多様化に対応したいケースなど、資格を取得しようとする事例はあると考えられる。管理士の活躍事例の紹介などを通じ、管理士の仕事やその重要性について広く周知し、受験者の裾野を広げていきたい。例えばマンションに住む主婦が、普段暮らしている目線で業務に取り組み活躍することもあり得るだろう。二つの老いに限らず、新型肺炎や災害もあってマンション居住や管理への注目も多方面から集まってきている。関心を寄せられているときだけに、管理士という資格があり、どういう仕事をしているかという認知を、まずはしてもらわなければならない。

みらいネット、長寿命化への重要なツールに
管理士や自治体との連携で周知も


――マンションみらいネットを改良し使い勝手を良くした。今後の活用促進やあり方は。
 藤田氏 みらいネットは管理情報を電子化して居住者間でも情報共有を可能にするもので、管理の適正化や適切な修繕などによる長寿命化のための重要なツールとなり得る。ただ、正直に言って普及はまだこれからというところだ。今年度からコースの一本化や管理組合が登録する機能の充実、料金体系の簡素化といった見直しを行い、よりわかりやすく使いやすいものに変更している。日管連に業務を委託し、管理組合への訪問説明や登録推進などを行っていく予定だ。新型肺炎の影響でこの予定は遅れているが、それでも7、8月はみらいネットについてまとまった問い合わせが来ており、関心が広がっている感触はある。
 管理計画認定制度などが運用されるようになれば、管理に関する情報の整理は不可欠だ。統一的な枠組みやフォーマットでの情報の管理・電子化ができるみらいネットは、組合が行う計画の策定や見直しのほか、自治体による計画の認定にも重要なツールになり得るのではないか。
管理計画認定制度の詳細は国土交通省で検討されているところではあるが、計画を認定するには管理組合の運営状況や管理状況を審査することになると考えられる。みらいネットは管理に関する情報が広範囲にわたって登録できるので、みらいネットに情報が入力されていれば審査したものとみなすようにするなど、認定制度とみらいネットが連携できるようにしたい。また、組合が申請した情報の妥当性を検証することも必要になると考えられる。改正法に関する国会審議でも、認定制度の運用では管理士や管理士会との連携を深めていくという答弁もあることから、検証の場面で管理士が一定の役割を果たすことになるとみられる。みらいネットへの情報の入力は管理士が協力していることもあり、管理士や管理士会と連携した活用の訴求も検討したい。自治体だけで認定制度の運用を進めるのは難しい面もあるとみられ、管理士の役割もでてくるだろう。自治体とも連携して普及につなげたい。


【プロフィール】
藤田 博(ふじた・ひろし)氏
1977年3月東京大学法学部卒、同年4月建設省(現国土交通省)入省。1994年7月住宅局総務課企画官、2003年7月土地・水資源局総務課長、2008年7月国土交通大学校長などを歴任。2009年7月財団法人民間都市開発推進機構常務理事、2014年7月住友不動産株式会社理事を経て、2020年6月から現職。1953年11月18日生まれ、66歳。

2020/10/1 マンションタイムズ

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