トップインタビュー マンション管理の未来 第53回 ホームライフ管理社長 德永 修氏(下)

トップインタビュー マンション管理の未来 第53回 ホームライフ管理社長 德永 修氏(上)より続く

コールセンターで得られた情報から 顧客満足度の向上に

―コロナウイルス感染症対策で業務は変わったか。

 德永氏 フロント社員は50%の在宅勤務率で業務を行っており、まずは在宅勤務に向けてのインフラを整えた形だ。会計担当事務社員は個人情報管理保護の観点から在宅勤務が難しく、工夫の必要がある。管理組合に対してはオンラインによる理事会の提案を開始した。リアルでの信頼関係が構築された上でオンラインに移行するのであれば問題は少ないが、組合の理事長や当社の担当者が変わる場合は、オンラインだけではしっかりした関係の構築が難しい。当面はリアルとオンラインのハイブリット型で調整しながら、いずれはお客様の利便性のためにも非接触のオンラインを主体にしていきたい。

 コロナ禍を経験してオフィスのあり方が変わっていくのではないかと感じている。社員が都心の大型ビルに集合して自席に着いて仕事をするという形を定型にせず、在宅勤務を前提としてオフィス面積の効率化を進めていきたい。特に首都圏では社員の通勤時間が長く、通勤による感染リスクと時間の消費が大きい。自宅から30分程度のサテライトオフィスに出勤し、これまで通勤にかかっていた時間を有効活用し、さらに業務の生産性を向上させたい。

―マンション管理業務における質の向上について。

 德永氏 グループの力を活かしてワンストップでマンション管理にまつわる全ての業務を貫徹させることで管理サービスの質を向上させたい。穴吹HSグループ内の西日本エリアでは自社で一貫したサービスが提供できる体制が作れているが、首都圏ではまだ整っていないのでM&Aも含めて体制の構築を進めたい。

また、高松と札幌にあるグループのコールセンターの機能をさらに強化して、お客様の満足度を聞き取るアウトバウンドコールによってリフォームや清掃業務の満足度をヒアリングし、質の向上につなげる計画もある。穴吹HSではコールセンターにフロント経験者を配置し、受電での問い合わせのおよそ6割以上を即答できている。年間約12万件のお客様からの意見をいただいている中で、それらを分析することで先手を打った組合への対応ができる。グループにコールセンターを設置してから約10年が経過し、さらなる強化に向けて次のステップに進みたい。

 また、穴吹HSですでに実施している住まいのアンケート調査を今年度からホームライフ管理でも実施していく方針だ。お客様からの評価や指摘についてチームで改善していく取り組みになる。

加えて、穴吹HSですでにスタートしている区分所有者ごとのウェブサイトを来年1月からホームライフ管理でもスタートする方針だ。毎月の管理費が一目で分かるほか、管理組合関連資料の収納やマンション内の設備の使用方法を動画で説明する機能なども搭載するサイトとなる。またマンションの部屋を売買・賃貸に出した場合の自動査定などもAIを組み入れて提供したり、顧客へ直接アンケートができる仕組みも組み入れたい。管理組合のみならず区分所有者の利便性が高まるサービスを組み入れて、ペーパーレス化にも寄与できる仕組みへと仕上げていきたい。

修繕費の銀行融資  借り入れのハードルをもっと低く

       

―今後の業界の見通しについて。

 德永氏 マンション適正管理評価制度などの評価制度の導入で管理会社のレベルが一般消費者に理解され、管理マンションの品質で管理会社の評価が変わるということがこれからも続くことになり、管理会社の淘汰は続くだろう。その一方で、修繕計画がずさんなマンションがスラム化することが社会問題になっていくのではないかと思う。管理業務を効率化し生産性を高めた上で、スリム化したローコスト管理というメニューもグループで検討していく。管理会社はプロの目線で適切なアドバイスを組合に提供する使命を担っている。多様なメニューで対応していかなければいけない時代になってきている。

―政策要望や業界に必要な支援策は。

 德永氏 マンション管理員や清掃員の短時間の勤務を副業でこなしてもらうために、行政として副業しやすい環境を整備してほしい。現況では勤務時間数が多い会社が労務管理の責任負担が重い仕組みになっており、副業希望の人を採用しにくい。

 修繕積立金が足りない管理組合が銀行から融資を受ける場合、会社組織ではないので借り入れが難しい場面がある。管理会社が受託している管理組合が返済遅延するケースは非常に少ないと思うし、資金計画や返済計画は緻密に立てられる組織だと思うので、融資のプランがもっと選べるようにしてほしい。借り入れの壁のハードルが高く、提出すべき書類も複雑で、厳しいと感じている。

 さらにカーボンニュートラルへの対応に対する補助金を拡充してほしい。2035年までにEVカーへの置き換えは急速に進むと見ており、管理会社としてマンション駐車場の充電設備の設置などを実施していかなければいけないと考えているが、相当な費用がかかる。カーボンニュートラルな社会を実現するためにも既存マンションによりメリットを出した政策が必要だ。

 また、居住者が高齢になり、役員のなり手がいない管理組合が増えている。本来、マンション管理は管理組合が主体的、かつ自主的に活動すべきなのだろうが、高齢化社会の中で難しい局面に差し掛かってきているのが現実だ。居住者の高齢化と対峙する管理会社の立場からすると、管理業界として第三者管理を推奨し、後押ししていただきたいと考えている。

##德永 修氏(とくなが・おさむ)氏

1965年8月26日生まれ、愛媛県出身、1989年4月現あなぶきグループ入社、1995年3月株式会社穴吹ハウジングサービス入社。2007年7月同社執行役員就任、2009年4月同社常務執行役員就任、2013年6月同社常務取締役就任、2020年12月ホームライフ管理株式会社代表取締役社長就任。株式会社あなぶき建設工業取締役、株式会社あなぶきデザイン&リフォーム取締役他。

マンションタイムズ
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