残置物処理モデル契約条項をどう見るか① 高齢化社会における孤独死リスクー中島成弁護士
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 国土交通省と法務省が6月7日に示した「残置物の処理等に関するモデル契約条項」は、賃借人の死亡時に残置物を円滑に処理できるよう、賃貸借契約の解除と、残置物の処理に係る死後事務委任契約について示している。高齢者が自室で亡くなってその残置物を処理する場合、多額の費用が発生するケースが一般的で、その費用は家主が負担する。家賃債務保証を利用している場合に、これらの費用が保証会社が負担する可能性はあるか。モデル契約条項が家賃債務保証ビジネスに与える影響について、中島成弁護士がポイントを解説した。(全国賃貸保証業協会法務委員会セミナー(7/26)より収録)

 高齢化社会における不動産賃貸業のリスクは孤独死

 内閣府の高齢社会白書(2017年)によると、65歳以上の高齢者のいる世帯は、15年現在、2372万4000世帯で、全世帯(5036万1 千世帯)の47.1%。そのうち、「夫婦のみの世帯」が一番多く約3割。「単独世帯」と合わせると過半数を占める。65歳以上の高齢者の子供との同居率は、1980年にほぼ7 割であったものが、2015年には39.0%。単独世帯又は夫婦のみの者は1980年には合わせて3割弱であったものが、2015年は56.9%まで増加している。

 65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、12年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)。25年には約5人に1人になるとの推計がある。

 高齢者のいる主世帯について、住宅所有の状況をみると、持ち家が82.7%と圧倒的に高い。ただし、世帯別にみると、高齢者単身主世帯の持ち家の割合は65.6%で、高齢者のいる主世帯総数に比べ持ち家の割合が低い。65歳以上の一人暮らしの高齢者が、病気などの時に看病や世話を頼みたいと考える相手について、「あてはまる人はいない」とする人は、子供のいない男性で35%と最も多い。

 孤独死(誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死)を身近な問題だと感じる(「とても感じる」と「まあ感じる」の合計)人の割合は、60歳以上の高齢者全体では2割に満たないが、一人暮らしでは4割を超えている。

 都市再生機構が運営管理する賃貸住宅約74万戸において、単身の居住者で死亡から相当期間経過後(1週間を超えて)に発見された件数(自殺や他殺などを除く)は、15年度に179 件、65歳以上に限ると136件の孤独死があった。

 賃借人が亡くなった場合の賃貸借契約の効力

 相続人がいる場合は、賃借権も財産権の一種であるため、賃借人が亡くなると相続される。賃貸借契約は賃借人が亡くなっても消滅せず、相続人との間で効力を有する。そのため、賃貸人としては、相続人との間で賃貸借契約の合意解除、賃料滞納がある場合は相続人に対して賃貸借契約解除などの措置を取って初めて、賃貸借契約を終了させることができる。なお、相続人が複数いる場合は、賃貸借契約解除の意思表示は相続人全員に対してしなければならない(最高裁昭和36年12月22日判決)。

 一方で相続人がいない場合はどうなるか。

 相続人がいない場合も、賃借権は財産権の一種であるため、ただちに賃貸借契約の効力が無くなることはない。相続人がいないとき(いることが明らかでないときを含む)は、遺産は法人とされ、家庭裁判所が、利害関係人等の請求で、相続財産管理人を選任しなければならない(民法951条、952条)。

 その後、官報掲載等の裁判所の手続によっても相続人が見つからなかったときは、相続財産管理人は、遺産に係る債務の弁済や換価などを行い(同法957条)、最終的に残った遺産は国庫に帰属することになる(同法959条)。相続人がいるかどうか不明の場合は、法的には、利害関係人が裁判所に相続財産管理人選任を申し立て、相続財産管理人との間で、賃貸借契約の解除、換価等の処理をすることになる。なお、賃貸人もこの利害関係人に含まれる。残置物処理モデル契約条項をどう見るか②へ続く

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