新時代の管理運営を探る49 情報社会に対応するソフトのインフラを検証「ブラウシア」の防災訓練(下)飯田太郎(マンション管理士/TALO都市企画代表)
ブラウシア(千葉市、438戸)防災訓練の様子

新時代の管理運営を探る49 情報社会に対応するソフトのインフラを検証「ブラウシア」の防災訓練(上)より続く

フロアごとの班制度とファースト・ミッション・ボックスを初運用

 ブラウシアが実施した今回の防災訓練の最大の目的は、昨年秋の管理組合総会で決定した班制度と初動期の対応策を納めたFMBを初めて運用することである。
 班制度は1年任期の輪番で理事会が3名を各階(フロア)ごとに指名するもので、班長1名、副班長2名を互選する。平時はコミュニティ活動の世話役的な役割を果たしながら、高齢者、障害者や小さな子ども等がいる住戸を知ることになる。フロアによって住戸数が違い居住者の入れ替わりもあるが、概ね7~10年で一巡するから、自然な形でフロアの居住者構成や災害時に支援が必要な人等もお互いに把握することになる。
 FMBは各階のリーダー用と災害発生本部用があり、それぞれ所定の場所に格納されている。中には災害発生初動期に活動の手順を記載した指示書、トランシーバー、ビブス等が納めてある。発災時には頭の中が真っ白になり、日頃は分かっていることもできなくなる。
深呼吸をして指示書を読むことで落ち着きを取り戻し必要な行動ができる。災害、特に大地震は何時、発生するかわからない。各階のリーダーや理事会のメンバーの多くが不在ということもある。FMBはこうした時に在宅している人が、誰でも初期対応をできるようにする意味もある。
 今回の防災訓練では居住者の多くは住戸内に留まることになる。そこで新しい趣向として実施したのが防災川柳の募集とアンケートである。川柳は自分たちの行動を一歩離れたところから見る、心の余裕を示す意味もある。今回投稿したのは17人。44句の中から投票で 「逃げなくちゃ 我が家のペットは なぜ重い」が一席に選ばれた。 
 今回の訓練で理事会や防災委員会が重視したのは①防災リーダーは責任を負う必要はないが可能な範囲での最善の努力をする、②在宅している人が誰でも対応できるようにする、誰かの助けを必要とする人を共有する─。これを全居住者が防災リーダーを輪番で経験することで自然に身につけることである。
 ブラウシアの防災活動にアドバイザーとして関与してきた防災ネットワーク研究所の本瀬正和氏は「多彩な内容の訓練だったが、初回にしてこのレベルで円滑に展開できたのは、『防災』という狭い範疇ではなく、これまでブラウシアが培ってきたマンション力が生きている。個々の現場では慣れないためのアクシデントもなくはなかったが、臨機応変に対応できていたように思う。防災委員長の加藤さんが本部長室(シアタールーム)にこもりっきりで実況中継に徹する中、全体運営は各ポジションの担当者が自律的に機能し、かつ全体的に見ても連携が取れていた。かなり背伸びした企画に多少懸念を抱いていたが、これがブラウシアの力で、それまで積み重ねてきたプロセスがものを言った」と話している。
 コンクリート造のマンションは木造住宅密集地域等に比べて堅固で燃えにくいため、大地震が発生したとき、初期の段階では消防等の限られた公助力の投入は期待しにくい。管理組合を中心に在宅している者による自力対応が求められる。マンション総合調査の結果をみても「管理に関して取り組むべき課題」として「防災対策」をあげる区分所有者が最も多い。しかし、標準管理規約は防災についてほとんど何も記載していない。標準管理指針には標準的な対応として、年1回程度定期的な防災訓練の実施等の7項目、望ましい対応として①災害時に必要となる道具・備品・非常食類の備蓄、②高齢者等が入居する住戸を記した防災用名簿の作成、③災害発生時における居住者の安否確認体制の整備、④災害発生時における被害状況・復旧見通しに関する情報の収集・提供体制の整備─が示されているが、この指針の存在自体を知らない管理組合も多い。火災への対応を中心とする定型的な消防訓練を行うことで、防災に取り組んでいることにしているマンションも多い。築55年を目標に終の棲家としてのマンションの構築を戦略的に進めるための、ガバナンス確立の重要なプロセスとして防災を位置付けているブラウシアに学ぶことは多い。
 ※Zoomで配信した防災訓練の内容はYoutubeでアップしている。

2021/8/5 月刊マンションタイムズ

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