全国住宅産業協会の定時総会と理事会が6月8日に都内で開かれ、馬場研治会長が再任された。コロナ禍で住宅業界の潮目が変わるなか、協会をどう運営するのか。2期目を迎えた馬場会長に方針を聞いた。
一昨年6月に会長となり任期が2期目に入った。
馬場氏 政策提言と会員の自己啓発、引き続きこの二つを主軸に活動する。政策提言では、当協会が中心となり訴えてきた住宅ローン減税の床面積要件緩和が昨年に実現した。住まい方が多様化する一方、制度が追いついていない面があり、今後も足元の課題を関係機関に提言していく。
―ローン減税の面積要件緩和を受けコンパクト物件に力を入れ始めた不動産会社もある。
馬場氏 世帯当たりの平均人数が減っているし、供給者側も建築費が高止まりするなかで総コストを削るには戸当たりの面積を縮小せざるを得ない。ただ、すべての住宅を小さくするのでなく、生活様式に応じて様々なサイズを選べるのが良いと考えている。
―コロナ禍は住宅業界には追い風になった。
馬場氏 在宅機会が増え、結果的に住宅の需要が喚起された。特に間取りや内装を変えられる持ち家の人気が高まった。一方、昨年10月に消費税率が上がった影響もじわじわと出ている。実際に増税後、新設住宅着工戸数が20カ月以上減り続けた。建築費と販売価格の高止まりもあり住宅取得が難化した。
―住宅市場を短期的にどう展望する。
馬場氏 実需では首都圏郊外の住宅が売れやすくなっているが大きな流れではない。投資の観点では金融緩和で住宅の資産価値が上がり、そのメリットを富裕層などが享受している。結果的に住宅を買える層と買えない層の二極化が進んでいる。とは言えコロナ禍の影響は中長期的にみなければ判断できないため、現時点では傾向がやや変わった程度としか言えない。
―戸建てには「ウッドショック」の余波が広がる。
馬場氏 一過性で済めばいいが米国市場の需給が緩む気配がなく、影響が長引く可能性もある。日本市場は国産材の供給体制が弱く、今後1年程度は木造住宅の供給難が続くのではないか。動向を注視したい。
―マンション価格も高値が続く。
馬場氏 これは需給バランスよりも労務費が上がったことの影響が大きい。土地代と建築費も高く、当面は値下がりする要素がない。
―ただ人口減少で長期的に住宅需要は落ちる。
馬場氏 既存ストックの有効活用が重要さを増す。近年は耐震性や省エネルギー性能などが不十分な空き家が急増している。06年に住生活基本計画が作られる前にできた古い住宅が国内に1600万戸以上あり、それらの更新が大きな課題だ。良質な住宅を残しつつ、既存住宅を建て替えるという作業を同時に進めなくてはならない。
―空き家の更新には多くのハードルがある。
馬場氏 日本は欧米などに比べ私権が強く、そのことが空き家が増える原因の一つになっている。災害リスクの高い地域に開発規制をかけるなどの措置が、長い目でみれば災害対応のコストを抑えることになる。
―協会としてストックの活用にどう取り組む。
馬場氏 既存住宅の耐震性だけでなく断熱性を高めることが課題だ。住宅の省エネ改修には戸当たり1000万円ほどかかることもあり、それなら建て替えた方が合理的だ。
―協会活動の課題について。
馬場氏 供給者と住み手の高齢化が進んでいる。委員会活動を通じて会員の住宅事業が健全に回るよう環境を整えることが重要だ。税制面に加え、事業資金を適切に確保できるよう関係機関に支援措置を要望していく。(日刊不動産経済通信)