国土交通省は標準管理規約の改正作業に着手した。IT総会・理事会の開催方法と、共用部分と専有部分の配管の一体更新に道筋をつけるのが改正の大きな柱。IT総会・理事会は、コロナ禍で実施を模索する管理組合もみられたことから、標準管理規約を改正し円滑な開催につなげる。配管の一体更新は、区分所有者ごとに行う専有部の配管更新で整備の足並みがそろわず、マンション全体の劣化や管理不全につながる懸念が高まっていることから、標準管理規約で一体更新が可能である点や修繕積立金で費用を拠出できる点を位置付ける。2021年度に入ってからパブリックコメントを受け付け、同年度の早期に改正させたい考えだ。
国交省は1月29日に開いた「マンション管理の新制度の施行に関する検討会」で改正案を提示、委員やオブザーバーと内容を議論した。 IT総会・理事会の開催に関しては、コロナ禍によりオンラインでの集会開催が求められる中で、議決権行使や総会延期のあり方などを定め、円滑な実施ができるようにする。提示した改正案では、まず理事長の職務を定めた第38条について、前会計年度の管理組合の業務執行に関する報告や、職務の執行状況の理事会への報告をウェブ会議システムで行うことも可能とコメントに記載することにした。また、組合員からの質疑応答への適切な対応が必要な点も明記した。総会の招集を規定した第43条では、会議の日時や場所などを2週間前までに組合員に通知することを定めている箇所について、ウェブ会議システムで総会を開催する場合の「場所」は「システムにアクセスするためのURLやID・パスワードが考えられる」とコメントで明確化した。理事会の招集通知に関してもこの43条コメントを参照するよう、該当している52条のコメントに示した。
ウェブ会議システムを利用して総会の議決権行使を行うケースについても、議決権について規定する46条のコメントで明確化した。コメントではウェブ会議システムを利用して組合員が議決権を行使する場合も「総会が開催される物理的な場所に行って議決権を行使する場合と同様の取扱いになる」と記載。ただし書きで、第三者のなりすましやサイバー攻撃などの不具合が発生した場合は決議が無効になる可能性がある点も記載している。 総会の定足数や議決を定める47条では、本文の中で会議にウェブ会議システムも含まれる点を記載するとともに、定足数についてウェブ会議システム等で総会に出席し議決権を行使することが可能であれば出席組合員にカウントされるとコメントに記載した。出席組合員として扱われるのは議決権行使が予定される出席者に限られる点を強調しており、ウェブ会議システムで傍聴する組合員は出席組合員に含まれない、とも記載した。
理事会の議事などを定める53条でも47条と同様の対応をとりつつ、コメントではウェブ会議システムを利用できない理事への質問機会の確保や書面などによる意見提出ができるよう配慮を求めた。一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う不測の事態や生活様式の変化にも対応した改正も俎上に載せている。総会の開催については、42条の「毎年1回新会計年度開始以後2カ月以内」に通常総会を招集する規定について、「災害又は感染症の感染拡大等によりやむを得ない場合においては、この限りではない」と、2カ月以内の招集時期を延期することも可能になるよう改正した。コメントでも、やむを得ない場合にはその状況が解消された後に「遅滞なく招集すれば足りる」と明記した。共用施設の利用については、18条のコメントで「感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられる」と記載。玄関前などへの「置き配」についても18条コメントで「共用部分への置き配を認める場合は、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある」とする案を提示した。さらに、改正マンション管理適正化法・マンション建替円滑化法に対応し、管理計画認定制度への認定の申請、要除却認定の申請について総会の議決事項である点も48条に新たに記載した。
改正案は、委員から修正や詳細な説明を求める意見もあり、改めて省内で調整する。「ウェブ会議システム」という文言の定義の明確化や、ウェブ会議システムでの議決権行使の方法のあり方などについて、修正や追加の記載などを検討する。また、42条の総会の延期について、区分所有法で明確な規定がない中で標準管理規約に先取りして記載できるか、との意見もあり、記載方法や内容が精査されることになりそうだ。。
月刊マンションタイムズ 2021年3月号