資材・設備の不足が深刻、対策が急務に
―代替品利用や商品企画の変更などで対処
東日本大震災の影響で、住宅メーカーは建築資材・設備の不足が深刻だが、消費者の安全・防災意識の向上から建替えやリフォーム、太陽光発電システム(PV)や蓄電池への消費者の関心が高まっている。
プレハブメーカー各社には、プレハブ建築協会を通じ仮設住宅建設の要請がきている。2000戸を建設予定の積水ハウスは、東北工場(宮城県加美郡)と関東工場(茨城県古河市)に仮設住宅用のラインを確保。1000戸のミサワホームとパナホームも2工場にラインを確保した。大和ハウス工業は、全国10工場のうち6工場で部材を生産するほか、子会社の大和リースの工場も利用し、生産態勢を整えている。職人については「北海道や関西方面からも応援を入れている」(大和ハ)など、東北地方以外に各地から職人を招集。心配されている部資材も、大畠章宏国交相がバックアップを約束。住宅生産団体連合会の樋口武男会長(大和ハ会長)は、大畠国交相との会談後に「資材の確保は大丈夫」としており、仮設住宅については行政が進めるべき用地確保が最大の課題となっている。
一方、一般住宅については、資材不足が影を落としている。特に、生産工場が被災した合板と住宅エコポイントの影響で震災前から起こっていた断熱材の不足が深刻化。部品不足でエコキュートの生産がほぼ停止しているほか、水回り製品についても部品メーカーの被災の影響により「ユニットバスの生産が滞り、受注を受けても納期は未定」(LIXIL)、「システムキッチンや一部温水洗浄便座、水洗金具などの生産ができない」(TOTO)という状況。合板や断熱材については、晩春から夏にかけて輸入による品不足解消の見込みも出ているが、中には新規着工のストップや工期の遅れが生じている事業者も出ている。住宅設備に関しては、各社は施主と代替品の相談を行っているほか、「断熱材の海外調達や発泡性断熱材利用も検討」(三井ホーム)、「従来とは異なる合板でも建設できる商品開発を進める必要がある」(東日本ハウス)という取組みも進めている。
停電騒動でPVと蓄電池への関心高まる
消費者の動きでは、地震やその後の停電騒動により「耐震やPVリフォームの相談が増加している」(木下工務店)、「千葉県や茨城県で建替えやリフォームの相談が増えているほか、東海地方では一旦建替えを断念した顧客が商談に復帰している。PVやエネファームへの関心が高い」(住友林業)など、耐震や創エネへの関心が高まっている。ただし停電時にはエネファームは発電しないほか、PVは日中でも発電した直流を交流に変換するパワーコンディショナーのコンセントに電化製品をつないで1・5kw分しか利用できない。これにより停電時対策として蓄電池が脚光を浴びている。蓄電池搭載住宅を発売予定の大和ハや住友林業には既に多くの問合わせがきているという。PVやオール電化リフォームで近年業績を伸ばしているウエストホールディングスは、新たに中国のインリーや韓国のハンファといったPVメーカーと新規の販売契約を締結する方針。来期(12年8月期)は、PV月間販売台数を震災前の1・5倍の4500台を目標としているほか、停電対策として蓄電池の導入も今後検討する。光熱費減や環境対策で注目されていた創エネ・蓄エネが、防災対策としても需要を拡大しそうだ。
(2011/04/14 日刊不動産経済通信)