中古マンションが流通市場で高い評価を得ていくためには、適切な改修工事が施される必要がある。施工会社はどのような戦略をもって大規模修繕を通じた付加価値を提供しているのか。このコーナーでは、マンション改修施工会社の大規模修繕についての考え方や戦略にスポットを当てる。今回はリノ・ハピアの取り組みを探った。
緻密さと共感を得る実績で顧客開拓
経常修繕から分譲マンション計画修繕へ
東京都大田区に本社を置くリノ・ハピアは、1949年に建築用材料、樹脂系建材の販売業として創業、1964年に世田谷区に渡辺物産として設立した。建材の中でも、建築・土木用の接着剤を主に扱ってきたことから、建物基礎フーチングにアンカーボルトを固着する工事を創業間もない頃から担当してきた。また、化学系の建材との関わりの深い防水工事やシーリング、タイル張り、外装といった施工に長じたことから、当時、戸数が伸びていた公団住宅の経常修繕に参入。主に下請けで手掛けてきた。その後2004年に住宅公団がURに移管されて以降は、大規模計画修繕においても元請化を推進。現在では、UR賃貸住宅の大規模計画修繕を主要事業としている。分譲マンションの大規模修繕への参入は2000年代の公団の民営化の検討段階から。分譲マンション大規模修繕については比較的新興の企業となっている。現在、年間工事高約70億円に対して、分譲マンションの大規模修繕の受注規模は主に元請・下請合わせて、約20億円の規模となっている。
専門性高い外壁タイル修繕に長じる
リノ・ハピアが得意とするのは、タイル修繕、外壁下地補修などだ。大規模修繕施工会社では外壁塗装から創業したケースが多いが、リノ・ハピアは経常修繕から参入したため、下地補修工事(コンクリート面等の躯体補修)、外壁タイル等の剥落・落下防止工法、屋上・バルコニー防水工事などを得意とする。とりわけ、外壁タイル等の剥落・落下防止は、GNSピンネット工法と呼ばれる面的に剥落を防止する工法を積極的に手掛ける。GNSピンネット工法は、補修が必要なタイル壁に対し、プライマー塗布、セメントフィラー塗布とGNSネットを張り(埋め込み)、GNSアンカーピンを躯体壁に打ち込むことで従来のタイルをGNSネットで抑え込み、その上から新規に塗装、タイル張り、石調系の仕上げ材などを施工することで、意匠性を下げずに、信頼度の高いタイル剥落防止を行う工法である。剥落保証は10年以上が可能で最長20年になっている。その他、既存タイルを活かして、強力な透明樹脂コーティングによってタイル質感を保持しながら剥落防止する工法なども手掛ける。現在、タイルの剥落防止は、管理組合には必須となっている。タイル張りのマンションに向けては大規模修繕と共に面的なタイル剥落防止工法を提案することで、長期的な建物の安全を提供していく。
URの経常修繕における強み生かす
同社はURの大規模計画修繕を長く手掛けてきたため、詳細な竣工書類作成には定評がある。例えば、URの大規模計画修繕では、下地補修工事において保全工事共通仕様書に定める品質管理試験及び報告書が厳しく求められている。注入口付アンカーピン併用エポキシ樹脂を注入するグリースポンプの性能や、使用するアンカーピンを決めるためのコア抜き、中性化深さの確認、エポキシ樹脂浸透確認、付着強度試験を行う。こうした竣工書類作成を常時行ってきたため、分譲マンションの大規模修繕における竣工書類でも組合から高い評価を受けている。
また、近年のUR賃貸住宅は、分譲マンション並みに意匠性を高めている物件も多い。同社はタイル張替えにおいても、「どこを張り替えたか分からない」施工品質にこだわってきた。なお同社は、URの優秀工事施行者に複数回選ばれている。URで培った大規模かつ高度な施工実績をPRしたいとしている。
プレゼン能力の向上を
同社は首都圏に複数の支店を展開し、それぞれに協力会社とのネットワークを築いている。現在は、公募への応募だけでなく、社員や協力会社からの紹介などから分譲マンション大規模修繕の受注に繋げている。今後は、管理組合からの共感を得られるプレゼンテーションに注力したいとしている。例えば、工事期間中にどれだけお住まいの方への負担を軽減できるか、また、専門工事業のプロフェッショナルとして最高品質の工事をご提供することなどをプレゼンし、管理組合の困りごとに寄り添う姿勢を見せていくとしている。
月刊マンションタイムズ2021年2月号