
鉄鋼や自動車などの特定分野に続き、全世界を対象としたトランプ関税は、経済の先行きを見えなくしている。住宅・不動産分野は、関税に直接的な影響はないとされるが、既に株価の乱高下や、超円安から円高に振れるなど、周辺環境は大きく動きをみせ、高関税が長期化すれば影響は避けられそうにない。
もともと景気動向をみるうえで、不動産は遅行指標とされており、景気の影響が現われるのは後になってから。そのため、すぐさま影響はみてとれない。トランプ関税は自動車業界を直撃し、輸出産業に打撃を及ぼしているが、住宅・不動産分野でも海外展開はあるとはいえ、輸出にあたらないため、関税の直接的な影響はないといえる。とはいえ、米中貿易戦争が引き続き、米中への輸出不振が続けば、景気は落ち込み、住宅・不動産市況に影響を及ぼすことになる。
既にみられたのが金融情勢の変化といえ、為替は円高に振れ、株価も大きく下げた。揺り戻しもあるが先行き不透明感は否めない。価格高騰により購入者が絞られた都心マンションは、株高による資産効果やインバウンド需要が市況を支えてきたことから売れ行きの減速が見込まれる。
ただ、一方で、金利情勢は、米国が金利引き下げを留保しており、日銀は利上げを先送りする様子見に入った。円高などで輸入資材が安くなることも踏まえれば、新築マンション販売にはポジティブ要素もあり、一方的に都心マンションが売れなくなるとも言い切れない。先行きが予想しづらい状況は続くといえる。
リモートワークからの出社率向上に伴うオフィス拡張移転がみられるなど、好調なオフィスビル市況も、すぐに影響が出るわけではない。拡張移転を検討していた企業が様子見に入る可能性はあるが、ネガティブな移転が現われるかどうかは景気動向次第。トランプ関税が長引けば、景気減速・悪化の可能性は高まるが、予測不能なだけになかなか先が見通せない。
