戸惑いや困惑の声が聞こえる-ウィズコロナ期のオフィスのあり方
OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて 、テレワークや時差、時短勤務の導入に踏み切る企業が増えている。ただ、こうした対応は感染防止や生産性向上などメリットがある一方で、日々のコミュニケーションやマネジメントについて戸惑いや困惑の声が聞こえることも事実だ。企業が急激な働き方の変化に直面する中、ウィズコロナにおけるオフィスのあり方を見る。

オフィス密度を減らすことは実務的に可能

業務フローを考え直すきっかけになった

 企業活動が段階的に再開されるなか、在宅勤務の広がりとオフィスのあり方が注目されている。ウィズコロナ、コロナ後の在宅勤務をオフィス戦略に組み込んでいくにはどうしたらいいのか。オフィスは縮小、拡大、もしくは現状維持なのか。不動産サービス会社のコリアーズ・インターナショナルが、方向性を示している。新型コロナウイルスの蔓延に伴う必然的な在宅勤務へのシフトは、人々の働き方に根本的な影響を及ぼし、今後のオフィススペースの使い方も大きく変わっていくと指摘。様々な政府の調査結果では、オフィスに求められる条件自体が変わっていく可能性が高いことが示されている。また分散型の職場環境を成功させるためには、補完するバーチャル・オフィス環境を如何に設計するかも極めて重要になっていくと予想している。

足元で東京における1人当たりの平均オフィス面積は12.3㎡であり、経団連が提供する物理的隔離のガイドラインとされる16㎡を下回っている。物理的隔離の要件を遵守する為には、ワークスペースを拡大させなければならないと指摘。単純にオフィスに滞在する人員数を削除するために出勤日数の減少、座席配置の割当を廃止するだけでなく、フレキシブル・ワークスペース(FWS)の活用などにより、総面積を維持しながら拠点を拡散することでオフィス密度を減らすことは実務的に可能と見ている。

分散型の勤務体系を可能にするために、オフィスの立地もある程度の分散が求められる。オラガ総研の牧野知弘代表は、「都心部に従業員を集めることで労働生産性が上がると思われていたものが、業務フローの見直しを含めて、組織のあり方を考え直すきっかけになった」とし、オフィス需要の再考を指摘する。情報通信の技術、テレワーク等で培ったソフトウェア、IT化、AIといったものが人をつなぎ、コミュケーションの手段が多様化する。そうすることでたとえ都心部にいなくとも、事業環境は確保できるという考え方だ。

フレキシブル・スペースがこれまで以上に注目

テレワーク導入は全社一丸となった取組み必要

 「新型コロナウイルス後には世の中がガラッと変わるという議論が、企業のオフィスのあり方においても現実味を帯びてきた」と話すのは、JLLの佐藤俊朗執行役員エグゼクティブディレクターだ。既に働き方が大きく変わり始め、持続可能な経営には、オフィス戦略の変革が不可欠になるという。新型コロナにより、本社が物理的にオフィスとして機能しない想定外の環境を実体験した結果、今後は、感染拡大の再燃を含め次なるパンデミックや自然災害に対し、効率的にBCP対応ができる拠点戦略が強く意識されるようになると見る。また、テナントは「ウィズコロナのニューノーマル」に適合した拠点戦略にシフトし、これまでの集約統合型から、拠点の集約と分散のベストバランス型へと変化する。そこでは、①従来のオフィス、②柔軟に選べるフレキシブル・スペースに加え、③テレワークによる在宅、も正式なオフィス機能として組み込まれることになると見ている。

 その時々で、「個人で集中したい時間」なのか「コラボレーションで啓発しあうべき時間」、「リアルなコミュニケーションに意味がある」のか「バーチャルで代用できる」のかによって適したオフィス環境を選ぶことになる。選択肢を与えられた個々の社員は、毎日、どんな業務を、誰と、どうやって、どのITツールを使って、どこでやるかを自分の責任でスケジュール化することが重要になる。

一方、フレキシブル・スペースはこれまで以上に注目される。家族構成等で仕事がしにくい住宅環境があることや、在宅勤務は長時間労働になりがちという調査結果があり、新型コロナ後は、外部のコワーキングやレンタルオフィスなど柔軟な使い方ができるフレキシブル・スペースが自宅以外のテレワークの場として重要な選択肢となる。不特定多数の人が集まり密接する空間を避ける意識が強くなり、当面は、これまでコワーキングスペースの中心コンセプトであった“コミュニティー形成”よりも、オンデマンドで柔軟に利用でき、使った分の時間でチャージされるタイプや、会社や個人ごとに仕切ったスペースの需要が拡大する、と予想する。

 ただ、足元ではテレワークが進みにくい現実もある。通勤時間が減る一方で、仕事時間の増加、業務効率の低下に加え、働き手に「出勤している人に迷惑、気兼ねする」といった考えが多く、管理側も評価基準が定まっていないことも少なからずあるからだ。

CBREはテレワークの導入に当たっては「経営層・管理職を含め全社一丸となって取り組むことが必要」と強調する。ポイントは5点ある。1つ目は、明確なゴールを設定しトップがコミットすること。福利厚生の一環ではなく、改革や事業としてしっかりとしたゴールを立てる。経営トップ自らが、テレワークの方向性を示しロールモデルとなって従業員をけん引する。2つ目は、変革を推進するグループを設置すること。部門横断的に変革を推進し、他の従業員を啓発するような部署を設置する。3つ目は、いきなり大きく始めないこと。長期的に腰を据えて導入、短期目標を明確化し、制度等は小さいことから始め、トライ・アンド・エラーで整備する。4つ目は、社風にあった改革を実行すること。テレワークの日数制限や勤怠管理は業種や職種に応じて最適解が異なるため、成功事例にとらわれすぎず自社にあった制度を確立する。5つ目は、アドホックなコミュニケーションが生まれる場を用意すること。イノベーションやコラボレーションを生むために偶発的な会話が生まれる仕組みを用意する。

 CBREは、次世代の働き方とは、「働く場所・働くスタイルに多様性を認めること」としたうえで、テレワークはその選択肢の1つにすぎず、新型コロナを受けて次世代の働き方への移行は加速し、これまでの働き方を再定義する必要が生まれると強調する。例えば、オフィスは対面コミュニケーションや自己研鑽の場としての機能が強まることが考えられる。また、対策としてサテライトオフィスの導入も増加する。これからは、現在のオフィス環境を考え直すだけではなく、サテライトオフィス賃借やコワーキングスペースの利用など、これまでとは異なる角度での不動産戦略の検討・策定が求められると見ている。

最適な働き方・働く場所のあり方は企業の業態、文化によって異なる。コロナを機に、時間をかけて段階的に考えていくことが各社に求められている。

不動産経済ファンドレビュー 2020年7月15日 537号

最新情報はTwitterにて!
おすすめの記事