(提供 日刊不動産経済通信)コリアーズ・インターナショナル・ジャパンは東京都心5区における第2四半期(2Q)のグレードA(A級)オフィスの需給動向をまとめた。空室率は前期比0・1㌽減の5・0%と上昇が一服し、平均想定成約賃料も0・3%増の坪当たり3万600円と2年続いた下降基調に歯止めがかかった。期中にA級オフィスビルの竣工がなかったことが、空室率を横ばいにとどめる要因になったと同社は分析している。
東京都心の企業には在宅と出社を併用する勤務形態が広がりつつあり、テナント企業がオフィス床を使う面積は縮小する傾向がある。貸し手側も大きな区画を分割したり、フリーレントの期間を従来よりも長めに設定したりして需要喚起を試みる。結果的に「実質的な賃料は水面下で下落が続いている可能性がある」(川井康平・リサーチ責任者)という。
一部の大区画が順調に埋まり、床需要の強さを示すネット・アブソープション(吸収需要)は2Q時点で1万500坪のプラスに回復した。ただ場所により需要は戻ってきたが空室率を押し下げるほどの力強さはない。今年後半以降に八重洲や虎ノ門など都心で大型ビルが相次ぎ竣工し始める。人材確保と環境対応の観点でそれらの新しいビルを求める企業は多く、連鎖的に二次、三次空室が増えそうだ。来年から向こう3年の吸収需要はコロナ禍以前の実績に満たない年10万坪前後が続くと同社は展望する。
オフィスビルの需要は区によって差が開く。渋谷の空室率は1%を下回り、西新宿や品川などでも埋め戻しが進む。一方、赤坂と六本木や、日本橋と八重洲、京橋の各エリアでは空室率が上昇カーブを描く。