顧客利益最優先の視点で見直しを 金融庁が資産運用業高度化プログレスレポートを公表
金融庁

 金融庁は5月27日、資産運用業高度化プログレスレポート2022を公表した。同レポートは、インベストメント・チェーン全体の機能向上を図るため、資産運用業の役割について議論、調査を行ったもの。顧客利益最優先の考え方を中心に資産運用会社と対話を重ね、経営体制、プロダクトガバナンス、目指す姿・強みの3点から課題を掘り下げている。2020年から3度目となる今発表では、特にプロダクトガバナンスに焦点を当て調査・分析を行った。さらに、グローバルで注目が高いESG関連公募投資信託を巡るグリーンウォッシュ問題について分析し、資産運用会社に求める対応を整理した。その他、近年拡大しているファンドラップ、2021年の同調査で販売実態に言及した仕組債などについても取り上げた。

 金融庁は、自社の目利き力を活かして運用結果を狙うアクティブファンド(AF)について、目利き力の実際を推計するため、国内株AF444本の時系列データを分析した。結果、ファンド数が少ない資産運用会社では良好なパフォーマンスを発揮している一方、100本以上のファンドを運用する社では、シャープレシオにばらつきが見られた。なかでも、超過リターンが有意にマイナスのファンドは32本。大半は大手資産運用会社のファンドで、そのうち約7割が設定から20年以上が経過していた。これは、商品組成後の品質管理に課題があることを示しており、信託報酬についても組成後のパフォーマンス結果に基づいた見直しが行われていない可能性を指摘した。

 ESG投信に係る課題については、グリーンウォッシュへの対応を中心に、資産運用会社に期待する取組みをまとめた。金融庁の調査では、38%の社でESG専門人材がおらず、外部委託も63%と比率が高い。組織体制、外部委託先管理には課題が多く、運用プロセス・アプローチの一層の強化を求めた。また、投資家への情報開示と明確な説明については、強くその改善を指摘。各社は、責任投資レポート等でESGに対する考え方、ESGインテグレーション等について説明努力を始めている。だが、ESGと成長性の関連などを具体的に記述する目論見書等は皆無で、今後の取組みが期待される。

 また、販売を拡大しているファンドラップ商品については、国内債権など安全資産の組入れ比率が高いもので、低金利環境から、投資家のコストが最終的なリターンを上回る逆ザヤが生じている状況を指摘。真に顧客利益に資するものか、商品性の再考を求めている。さらに、仕組債については、856本をサンプルとしてリターン分布およびリスク・リターン比を算出。結果、株式との相関が強い特性にもかかわらず、リスク・リターン比は劣後するため、株式に代えて仕組債を購入する意義はほとんどないと位置付けた。仕組債は、全体の約9割はプラスのリターンを出すものの、最高で元本の8割も毀損するなどロングテールリスクが生じるのが特徴と言える。

 金融庁は、いずれの課題も顧客利益最優先の視点に立っているか帰結するとし、同レポートの発表が各社の取組みへつながるかは、モニタリングを通して注視する方針だ。

2022/6/15 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー
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