(提供 日刊不動産経済通信)区分所有法の改正議論で、マンション建替えの支障になっている専有部分の賃借権の取扱いについて、3つの具体的な対策案が示された。分譲マンションで専有部分が賃貸に出されている場合、その区分所有者が建替え決議に賛成していても、賃借人を退去させられなければ建替えは事実上困難になる。現在は賃貸借関係を終了させる方法は限定的で、マンション再生には賃借権を円滑に消滅させる仕組みが求められている。
区分所有法の改正の方向性を議論している区分所有法制研究会が、建替え決議があった場合に賃借権を終了させる新たな仕組みとして示したのは、①建替え決議で建物を取壊し工事の着手時期の目安と賃貸借の終了時期を定める。決議から賃貸借終了まで6カ月を下ってはならないものとする②一定の請求権者が賃借人に対し補償金を支払い賃借権消滅請求をできるようにする③賃借人に賃貸借の更新拒絶の通知または解約申入れをするときは、借地借家法の規律で正当事由が求められるが、これを適用しないものとする-の3案。
建替え決議後も専有部分を賃貸する権限は失われず、専有部分の賃借権も存続する。現行法上は、賃借人が合意するか、賃貸人からの更新拒絶・解約申入れで正当事由が認められない限り、賃貸借関係は終了できない。事由が正当かは事案に応じて裁判所が最終的に判断するため、賃貸借関係の終了は保証されない。
各案には更なる検討課題が示され、研究会内で優劣はまだ決していない。マンションは、築古物件ほど賃貸化率が高い。国土交通省の調査によると、築10年未満の平均賃貸化率は9・1%だが、築40年以上は17・3%(16年度調査)。高経年物件の建替え推進では、専有部分の賃貸借契約は大きな課題になっている。