広い空間や間取り求める需要が購入牽引―FRK調査、売却減少は市況の様子見も
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 不動産流通経営協会(FRK)は、会員会社の全国の営業店所長へ行った「コロナ禍による顧客動向調査」の結果を公表した。昨夏から1年近く続いた中古住宅の購入需要が強く売却需要が弱い市況について、コロナ禍でより広い空間や間取りを求める層が近場での購入需要を牽引し、売主側では人との接触を避けて売却を後回しにするほか、市況を様子見している構図が浮かび上がった。
 アンケートは9月16日~10月4日に実施。有効回答数は771件。昨夏以降の中古住宅の購入ニーズの増加の要因では、「コロナ禍を契機により広い空間や間取りを求める人が増えた」が70%と最多だった。次いで「コロナ禍で動きが止まっていた分の需要蓄積(需要の期ズレ)」が34%、「金利面で今が買い時と思っている人が増えた」が31%、「資金的に余裕があり、不動産取得の希望者が増えた」が29%など。自由回答では、「在宅時間が増えて住まいについて考える時間ができ、より快適な住まいを求める人たちが増えたから」という趣旨の意見が非常に多かった。また、テレワークの普及で、郊外への移住ニーズが増加したという意見も複数挙がっている。「広い空間や間取り」を選択した人に移動エリアを尋ねると、「近場」が60%、「他エリア」が40%となった。
 一方、売却ニーズと在庫の減少要因については、「感染リスクを避け人との接触を敬遠している」が60%、「相場価格が強含みなので、今売るよりも様子を見ている人が多い」が50%、「減っていない」が5%。その他の自由回答も19%(148件)と多く、「コロナ禍では市場が低迷して有利な売却はできないと顧客が感じている」という趣旨の意見が最多で50件に上ったほか、「購入需要が多いため、売物件が捌けてしまって不足している」が19件など。また、「新築物件の供給不足による買い替え物件の減少」や「コロナ禍で転勤が減った」などの意見も散見された。
 直近の状況として、広い空間や間取りを求める顧客の割合がコロナ前より増えているかの問いでは、「増えた」が32%、「やや増えた」が44%、「コロナ前と変わらない」が23%となり、大きく増えていることが分かった。ただし、地域差も大きく出ている。回答をエリア別でみると、東京23区では「増えた」33%、「やや増えた」48%、23区を除く1都3県では「増えた」41%、「やや増えた」47%と拡大しているが、関西圏と地方都市では「変わらない」がそれぞれ29%、33%と増え、中京圏とその他エリアにいたっては「変わらない」がそれぞれ55%、53%と半数以上に上った。
 利便性の高い物件を求める顧客の割合がコロナ前より増えたかでは、「コロナ前と変わらない」が59%と最多で、そのほか、「増えた」が10%、「やや増えた」が19%、「やや減った」が11%、「減った」が2%。より広い空間や間取りを求める顧客が大きく増えた一方で、利便性を求める顧客の割合もコロナ前後に関わらず非常に多く、クロス集計でみると、非常に高い割合で広さと利便性を両立したいと考えていることが分かると分析している。
 コロナ終息以降のより広い空間や間取りを求めるニーズの動向については、「今後も続く」が50%と半数に上り、「コロナ前の状況に戻る」(24%)と「そもそもコロナ前後で変わりない」(22%)も合わせると半数近くに上り、二分する結果となった。自由回答で「今後のテレワーク等の勤務形態の普及・許容の度合いによる」という意見が挙がった。(日刊不動産経済通信)

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