建築費の上昇が続く。建設物価調査会によると、2024年7月の建築費指数の動向は、マンション(鉄筋コンクリート造)が前月比0・5%増、前年比では7・4%の増加、オフィスビル(鉄骨造)は前月比0・8%増、前年比で6・2%増、住宅(木造)は前月比0・5%増、前年比5・5%増となるなど、いずれも増加を続けている。その大きな要因となっているのが資材や労務費のインフレ・上昇のほか、時間外労働に上限規制がかけられる働き方改革、いわゆる2024年問題である。
今年(2024年)4月から建設業やドライバー、医師などの時間外労働規制が適用開始となり、残業時間の上限は、原則、月45時間・年360時間とされた。建設業では、残業規制が工事期間の長期化につながると考えられ、その分、建築費も増加することになる。
国土交通省は、持続可能な建設業を実現するため、改正建設業法において請負代金や工期に関するルールを変更、資材高騰に伴う請負代金の「変更方法」を契約書の法定記載事項として明確化した。
また、請負代金や工期に影響を及ぼすリスクがある場合、受注者から発注者に事前に通知することを義務化し、これを受けた発注者は、必要に応じ、誠実に協議に応じることが課せられた。詳細は、今年12月までの法施行に向け、政省令の整備やガイドラインなどが改正される予定。
一方、日本建設業連合会(日建連)はこのほど、民間の発注者向けに「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い」と題する文書をまとめ、公表した。そこでは、他産業より賃金が低く、労働時間も長いなど、厳しい労働条件を背景に就労者数が減少を続けている建設業を紹介、必要な担い手の確保に向け、「資材価格の高騰や労務費上昇の価格転嫁の対策などを強化していくことが急務となっています」と訴えている。
持続可能な都市開発の観点から不動産デベロッパーなど民間発注者サイドに変化もうかがえる。国土交通省建設業課による令和5年度の「適正な工期設定等による働き方改革の推進に関する調査」によると、民間工事の工期の設定方法について、「協議を通し、要望が受け入れられた」は前年比10ポイント増加の63・3%。また、発注者の6割が「受注者と協議して工期を設定」と回答し、「自社単独で設定する」(25・3%)を大きく上回った。
デベロッパーとしても工期や価格の変更に対応しないことには、プロジェクトに支障を来たす可能性を意識せざるを得ない。継続的に都市開発を進める上で、デベロッパーとゼネコンはコーワーカー、パートナーである。デベは、ゼネコンとのリレーションシップを強化し、建設業の働き方改革にも寄り添わなければ、プロジェクトは成り立たないところまで来ているともいえる。
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