日本市場の厚みに好感、ESGに商機も―コリアーズ・川井氏に不動産市況を聞く
川井康平・コリアーズ・ジャパンリサーチ責任者兼ディレクター(コリアーズHPより)

 コリアーズ・ジャパンのリサーチ責任者兼ディレクターに7月1日付で川井康平氏が就任した。ザイマックスから外資系の同社に移籍し、日本のリサーチ部門を率いる立場となった。コロナ禍で不動産市場には不透明感が漂う。川井氏に日本の市況感を聞いた。

 ―日本の不動産市場をどう評価する。
 川井氏 世界的にみて安定しているし、市場に厚みがある。多くの投資家が安定した不動産を求めるが、それが叶う市場は世界の先進国に日本を含め数カ国ほどしかない。投資資金を分散させる上で、欧米以外のアジア太平洋圏では豪州か日本、シンガポールに目が向く。日本の不動産市場は天井を打ったとの見方もあるが、大きな資金を動かす機関投資家などは投資スパンが長い。2、3年は市況が下降局面だが10年単位なら大きな問題にならない。再浮上する可能性もある。
 ―高齢化と人口減少で日本経済は縮小基調だ。過大評価されている面はないか。
 川井氏 多くの先進国で遅かれ早かれ人口は減る。日本市場の魅力はイールドギャップが大きい点で、ものによっては米国や豪州の2倍ほどもある。このため多少物件の価格が値下がりしても吸収できる。コロナ禍で東京都心のオフィスの空室率は上昇基調だが、それでも5%前後であり、他都市に比べ触れ幅も小さい。上海や香港では空室率15%なども珍しくない。
 ―米国の金利動向をどう展望する。
 川井氏 上がるのは間違いないが時期と上げ幅は読めない。仮に米国が金利を上げ始めたら、日本のイールドギャップは他国よりもさらに有利になりそうだ。
 ―主にオフィスと物流施設を扱っている。
 川井氏 オフィスについて言えば、東京都心の空室率は5%前後だが、長期的には深刻な影響があるとみている。コロナ禍で在宅勤務などが広がっており1人当たりのオフィス使用面積が割り出せない。働く場所や出社する頻度も時期や人により異なるなど変数が大きい。かつてのように多くの会社員が毎日一斉に出社する形ではなくなる。オフィス需要には調整が入る。
 ―コロナ後にどんなオフィスが支持される。
 川井氏 複数のシナリオが考えられるが、社員が集まる場は必要で、そうなると都心好立地のオフィスが有利だ。ただ大きな床は不要になり、丸の内のAクラスビルなどは小区画に分けたものが出回るかもしれない。逆に、都心に近く賃料設定も高めのB、Cクラスビルなどは需給が緩む可能性もある。
 ―物流不動産は活況が続いている。
 川井氏 物流とオフィスはコロナ前から下降局面に入っていたが、物流はこれからまだ伸びそうだ。大型の先端施設が日本にはまだ少なく開発の余地がある。東京は数多くの小型倉庫で物流が回っているが、今後、そうした施設の更新と大型化が加速する。
 ―住宅は安定していて新規参入の事例も多い。
 川井氏 多くの海外投資家は、東京にレジデンスの量が多い点に魅力を感じている。マレーシアやシンガポールなどのレジの価格も東京と同じかそれ以上に上がっている。東南アジアの国々に比べても日本の相場が割安だと評価されていると考えられる。
 ―ESG投資の観点が不可欠になりつつある。
 川井氏 当社としても拡大する方針だ。ただ個人的な見方では、日本では多くの人が「ESG」のうちSとGの概念を把握できていない。様子見の姿勢が強い。裏を返せば、環境認証などのような共通の評価軸さえできれば一気に浸透する可能性を秘めている。(日刊不動産経済通信)

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