山梨県が設置した「富士山登山鉄道構想検討会」(理事長=山東昭子・参議院議長)は、「富士山登山鉄道」構想について、富士山五合目を走る鉄道の運賃の想定を往復1万円とし、年間運賃収入は300億円に達するシミュレーションを示した。検討会の構想素案によると、富士山の環境や景観の維持・保全ならびに、技術的な適合性などを元に、導入ルートは既存の有料自動車道路である「富士スバルライン」上とし、交通システムはLRT(次世代型路面電車)が最も優位性が高いとする。なお現段階ではあくまで構想であり、鉄道の設置にあたり実証実験や着工の時期、運営事業者選定のスケジュールなどは白紙。
検討会では富士山五合目について、日本を代表する観光・景勝地であり、富士山を周遊できる鉄道が他に存在しないことから、インバウンドを含み年間300万人の輸送需要があると評価。年間300億円の収入は単年度損益として開業初年度から黒字になる計算。ただしLRTという限定された輸送力であること、且つ冬場のメンテナンスコストの取り扱いなどを含め、採算性についてはさらに今後しっかり検討すべき課題であるとした。なお事前に地元の人に対し鉄道の設置について説明を行ったところ、「方向性については概ね好意的な意見が寄せられている」(検討会事務局)とした。
富士スバルラインは富士山5合目を走る有料道路。5合目は富士山の世界遺産登録後に来訪者が急増し、同時に車両からの温室効果ガスや大気汚染物質の排出量の増加、5合目のトイレの処理の問題が噴出し、山梨県では、本来の信仰の対象としての神聖な雰囲気が損なわれているとした。
こうしたことを受けて県では、自動車交通から登山鉄道へ転換する可能性について「富士山登山鉄道構想検討会」を昨年設置し検討を進めている。同検討会には理事にデービッド・アトキンソン小西美術工芸社社長、島田晴雄・東京都立大学理事長のほか、不動産業界からは高橋誠一・全国賃貸管理ビジネス協会会長が名を連ねている。