超高齢社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物の老朽化と入居者の高齢化という「二つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、管理戸数の拡大を続けるレーベンコミュニティの保東實社長と宮下幸弘取締役に、重点的に取り組んでいる課題や今後の展望などを聞いた。
##適正化法と金融機関の進むべき道が相反している
――今後の管理業界の見通しは。
保東氏 居住者の志向がかなり多様化していくと見ている。タワーマンションや商業施設併設マンション、単身者向けマンションなど細かく分類していかないと対応が難しい。その中でも特に高齢化の進展に伴うニーズの変化は敏感に受け止めている。特に建替えは高齢者の負担が重くなかなか進捗しないと聞くが、容積率の緩和と再建築できる態勢づくり、余剰分を第三者に分譲できる仕組みをつくるなどして、建築費の負担が軽減する施策をとる必要がある。
――リプレイスへの取り組みについて。
宮下氏 リプレイスの組合が当社の管理受託の約45%を占めている。こうした物件は管理規約の内容にばらつきがあるので、なるべく統一したものにしていくよう組合に提案している。当社の現在の管理戸数が約6万戸。タカラレーベンからの供給と合わせて早急に総合管理10万戸を達成したいと考えており、リプレイスは今後も積極的に取り組んでいきたい。当社のホームページをきっかけにしたリプレイスの検討が増えている。
――管理会社のM&Aに関心はあるか。
宮下氏 M&Aで管理戸数を拡大する考えはない。当社の考え方やサービスを他社のものと統一することは難しい作業になるし、また他社の行ってきたサービスが当社のサービスだと思われてしまうと当社の評価に関わることだと思っているので、積極的に進める意思はない。
――政策要望は。
保東氏 マンション管理適正評価制度を実施する際に管理組合に対してもアナウンスがされるべきだと思う。国の施策としての方向性を管理組合に理解してもらわないと、管理会社の思惑だけで費用をかけて実施していると思われてしまい、「そんなことしなくていい」ということになりかねない。
当社の財務管理の担当者によると、銀行は窓口受付業務を縮小しており、人員を削減しウェブ化を進めているそうだ。マンション管理会社の業務はマンション管理適正化法に準じており、管理会社がネットバンキングやAI、ITが使えないのが実情だ。資金管理の方法は法律の要請に基づいているからだ。組合と協議の中で銀行の協力を得ながらどのように進めていくべきか課題がある。適正化法と金融機関の進むべき道が相反しているように思える。金融庁と国交省で議論をして管理会社や組合にとってよりよい手法になるような手立てを打ってほしい。金融機関から様々なシステムの売込みがあるが、どの管理会社も踏み込めないのはこの先、個別の法改正がどういう方向に進んでいくのか先が見えないからだ。大きな金額の投資でシステムを導入するにあたり方向性が見えない。若い居住者が管理組合の役員になっていく中で紙ベースのものをなくしていくためにも、適正化法と金融機関の足並みがそろうことが喫緊の課題ではないか。
宮下氏 管理業界がコロナ禍の中でどのように業務に取り組むべきか、統一した見解が出されなかったことが、各社によってバラバラな対応を生み、現場が混乱した。例えば4月の緊急事態宣言下でも管理員は出勤させず、清掃員が清掃だけをやるようにというような業界としての見解があれば居住者が納得できたと思う。各社が牽制しあいながら、管理員をどう配置したらいいか四苦八苦しているのが実情だったことが悔やまれた。
##保東 實(ほとう・みのる)氏
1983年株式会社宝工務店(現:株式会社タカラレーベン)入社。不動産販売の営業として手腕を発揮し、上板橋支店長に就任。1986年株式会社宝住販(後に㈱タカラレーベンと合併)の営業本部長兼常務取締役に就任。1988年タカラレーベンのオリジナルブランドマンション「レーベンハイム」シリーズ(後の「LEBEN」シリーズ)の管理を一手に引き受けるため、株式会社宝管理を設立。1996年株式会社レーベンコミュニティに商号変更。同年、株式会社レーベンコミュニティ代表取締役に就任。