ゆうちょ銀が新規業務の認可を取得 投資一任契約媒介で資産運用サービスを拡大


 金融庁は3月29日、ゆうちょ銀行における投資一任契約の締結の媒介業務を認可した。これにより、ゆうちょ銀は、投資運用業者である証券会社などの商品を仲介する形で、投資一任契約に基づき顧客の預かり資産を運用するサービスが提供出来る。2019年5月には、日本郵政グループと大和証券グループが、投資一任サービス等資産形成分野における新たな協業の検討を進めることで合意している。今後、大和証券のファンドラップ商品を仲介する方向で調整が進むと見られる。ゆうちょ銀は、高い顧客ニーズのある個人向け資産運用サービス市場に本格参入することで、収益源の多様化を進める。将来的には、地域に根差した郵便局ネットワークを持つ強みを活かし、取り扱い窓口を広げる。


 同認可により開始される“投資一任サービス”は、対面チャンネル資産運用商品の1つとして、多様化する顧客のニーズに応えるもので、取扱い当初は、全国に233店舗あるゆうちょ銀直営店のみで申込みを受け付ける。同銀担当者によれば、「日本郵便での取り扱いは、時期は未定だが販売状況や販売態勢等を踏まえて検討していく」予定。申込み受付後の顧客ごとの取引は、媒介元会社が実施・管理を行うが、ゆうちょ銀は契約締結後も顧客に対してサポートを続ける。管理態勢については、すでに販売している投資信託や変額年金保険を通じて構築済みだが、媒介元会社によるモニタリングが加わることで、より強固な内部管理態勢が整備され、安心・安全な金融サービスとして計画する。
 日本郵政グループは、新たな成長を遂げるためビジネスポートフォリオの転換が不可欠と認識し、グループ全体でDXを推進している。投資一任サービスにおいても、リアルチャンネルだけでなく、将来的にはアプリなどのデジタルチャンネルでの提供も見据え、相互補完的にサービスの充実を図ることで顧客の利便性向上を目指す。一方、同グループの事業は、郵便・貯金・保険について誰もが均等に享受出来るユニバーサルサービスとして提供する姿勢を示すものの、長期にわたる低金利政策などで厳しい事業環境が続く。ゆうちょ銀における新規事業の開始は、収益源の多様化を図るという点からも待望の認可と言える。
 だが、認可に先立って郵政民営化委員会が一般に募集した意見には厳しいものが目立った。全国銀行協会らが最も懸念するのは、完全民営化への道が途上であるにもかかわらず、間接的に政府出資が残るゆうちょ銀が高い顧客ニーズが潜在する資産運用サービス市場に参入することで、地域における公平な市場環境が阻害されるのではないかという点。日本郵政が公表した中期経営計画JPビジョン2025では、「金融2社株式は、同ビジョン期間中のできる限り早期に保有割合50%以下を目指す」としているが、その後について明確な道程が見えていない。
民間金融機関とゆうちょ銀は、互いの理解の下に連携を進めてきた。コロナ禍でも、地域活性化ファンドへ共同出資を行うなど、金融市場や地域経済活性化等に貢献する姿勢は共通している。新たなサービスが両者の関係に水を差すものとならず、地域リレーション機能の強化や顧客利便性につながるものとなるよう、認可を受けた日本郵政グループは健全な市場形成に向けた取組みを推進する必要がある。

22/4/15 不動産経済ファンドレビュー

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