トップインタビュー マンション管理の未来 57 中央日土地レジデンシャルサービス社長 初澤 剛氏(下)
中央日土地レジデンシャルサービス社長 初澤剛氏

トップインタビュー マンション管理の未来 57 中央日土地レジデンシャルサービス社長 初澤 剛氏(上)より続く

人手不足と高齢化 好循環に転換する切り札としてのDX

        

――マンション管理業務の現状と課題について。

初澤氏 3社が寄り合ってお互い知恵を出し合うという点が当社ならではの仕組みになっている。大手の管理会社と比較すると絶対的な管理受託戸数の差はあるが、製販管一体で「バウス」ブランドを向上させるという大きな目標があるので、丁寧な管理業務とサービス提供を心掛け、管理の質で勝負していきたい。

マンション管理業務の課題には、構造的な問題として管理員の高齢化があると認識している。DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、いかに管理業務を効率的に進め、管理員の負担を減らし、サービスの質を高めていくかが課題だ。管理業に携わる人の人手不足や高齢化は今後、大きくのしかかってくるだろうと思われる。3社のコラボレーションを生かして協力して進めたい。

 

――DXの推進について。

 初澤氏 「スマート管理」の実施に向けて専用のアプリの開発に取り組んでいる。新規の「バウス」物件の管理を今秋に受託する予定なので、そこでスマート管理を稼働する計画だ。スマート管理を導入することで管理の質の向上、管理員の負担の軽減、生産性の向上を図っていく。併せて、総会や理事会の運営効率化、理事の負担軽減にも取り組む方針だ。

 新築の「バウス」に関しては管理業務の開始と同時にスマート管理を実施することになるので、既存の管理物件に比べて導入しやすいだろうと想像している。まずは「バウス」で先行して導入し、徐々に既存の管理物件にも浸透させていく流れになると考えている。

スマート管理導入により管理の質を向上  DXで理事と管理員の負担を軽減

     

――国のマンション管理計画認定制度やマンション管理業協会のマンション管理適正評価制度が4月からスタートするが、どう取り組むか。

 初澤氏 評価制度により管理の見える化が進む一方で、取り組んだ管理組合へのインセンティブが見えないのが課題であると思う。我々の管理に評価がつき、評価を高めるべく取り組む流れになると思うが、そこにかかる負荷やコストはどういう形で担保されるのか。評価を高める取り組みに対して何らかのインセンティブがあると普及しやすい流れになり、管理組合にとってもメリットを享受できる。

 当社としては質の高い管理を行い、評価制度の中でどう評価してもらうかは大事だと思っているが、評価制度にこだわらずに当社独自で良いものを取り入れていく姿勢は持っておくべきだと考えている。評価制度の整備を待っている間に新規の「バウス」物件の受託が始まり、管理組合とのお付き合いが始まる。クオリティの高い管理でブランド価値を高めるという目標のもとで当社なりの管理の質を追求していきたい。

――今後の管理業界の見通しについて。

 初澤氏 マンション管理業はある意味、日本社会の縮図のような状態になっていて、社会が抱える様々な問題を凝縮した業界だ。その中で、人手不足と高齢化は待ったなしの課題だと認識している。特に管理員という業務の魅力、働き甲斐や働きやすさを向上させていくには何が必要なのか、真摯に考えていかないといけない。DXへの取り組みがその助けになるのではないかと考えている。ただ、DXを使ったツールが管理員に携わる人になじんでもらえるかという悩みはある。

 管理員業務の魅力が高まることで、人材が集まり、社内の体制が構築でき、効率化が進んで働きやすさにもつながるというように、DXが関わることで好循環に転換することを期待している。その循環が崩れると、管理員が確保できなかったり、管理組合との意思疎通がうまくいかずに理事会や総会の議論が深まらないというような悪循環になってしまう。好循環に変えていくことがマンション管理業を継続する大きなポイントだ。現在、その岐路に差し掛かっていると思う。

 一方で、管理がスマート化しても、杓子定規ではいかないような、人間としての温かみや真心がないと務まらないという側面も管理業務には残る。管理員の人柄や特技がマンションのコミュニティに寄与し、ざっくばらんな良いコミュニティができてくる可能性もあると思う。コミュニティ形成のキーワードは実はそういうところに潜んでいるのではないかという気がしている。「バウス」のブランド価値を高めるためにも管理に関わる人材の能力が向上できる仕組みが必要なのではないかと思う。

―政策要望は。

 初澤氏 マンション管理適正評価制度に取り組む管理組合へのインセンティブについては、強く要望したい。さらに、管理組合が加入する火災保険料の割引、また分譲マンション購入者への固定資産税と都市計画税の減免、共用部のリフォーム費用の優遇などがあると管理組合や区分所有者への経済的な負担が軽減されると共に、建物の資産価値の維持に貢献でき、ひいてはマンションを含めた都市基盤の持続可能性を高めることになると考えている。

##初澤 剛氏(はつざわ つよし)氏

1959年11月16日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。1983年4月第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。2014年みずほフィナンシャルグループ常務執行役員、2017年6月日本土地建物株式会社常務執行役員、2019年4月同社専務執行役員、2021年4月中央日本土地建物株式会社専務執行役員兼中央日土地レジデンシャルサービス株式会社代表取締役社長(現任)。

月刊マンションタイムズ 2月号

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