足元の堅調に油断は禁物 コロナ後は競争激化の住宅・不動産業界 (下)
不動産経済ファンドレビュー

足元の堅調に油断は禁物 コロナ後は競争激化の住宅・不動産業界 (上)より続く

営業トークも“見える化”へ

本格化するDX、解決策見いだせた企業が勝者

2022年はDXの活用が本格化する。その波についていけない中小不動産会社の淘汰も進むだろう。DXの概念は幅広いが中小会社でも導入しやすいところでは、例えばコグニティという会社が船井総合研究所と共同開発した商談音声解析サービスがある。大手ハウスメーカー4社と不動産会社28社の営業トークをAIが12項目に分けて解析し、無駄な質問や会話などが分かるようにした。つまり“営業トークの見える化”である。

これからの不動産営業は1人のトップ営業マンに頼るのではなく、営業社員全員の底上げを図る方向が主流となっている。DXで生産性を上げるということは、従来ベテラン社員の勘や技術に頼っていたものを、膨大かつ正確なデータで最適化するということだ。ただ、データとデジタル化で社会変革を図るDXの本質からすれば、日本はまだ緒に就いたばかりだろう。これまで導入されているAI査定、追客管理、オーナーアプリ、営業トーク分析などはいずれも従来の業務を効率化する手段にとどまっているからである。この先、社会の根本課題を発見し、デジタル技術にその解決策を見い出せた企業が最終レースの勝者となる。

「賃貸新時代」が始まる

住宅政策の軸足“持ち家促進”は変わるか 

今年は賃貸住宅市場に大きな変革の芽が生まれるのではないかと期待される。昨年6月に賃貸住宅管理業法が全面施行され、これまであいまいだった賃貸仲介と管理業務が明確に分離されたからである。更に大きかったのは、昨年11月に明らかとなった「賃貸住宅大規模修繕積立金の損金算入制度」の実現である。分譲マンションの区分所有者が所有する住戸を第三者に貸し出している場合、管理組合に支払う修繕積立金は経費算入が可能である。しかし、賃貸住宅における修繕積立金は経費算入が認められていなかった。これはおかしいのではないかということで、業界の要望を受けた自民党の賃貸住宅対策議員連盟(=ちんたい議連、石破茂会長)が国交省と国税局に働きかけていたものだ。

それが今年から認められることになり、家主が将来の大規模修繕のために共済組合に収めた積立金はその年の経費として計上できるようになった。これは賃貸住宅の計画的な修繕を促し、入居者の快適な居住環境の確保にもつながっていく。ちんたい議連の石破茂会長は「日本の住宅政策はこれまでは持ち家促進に重きが置かれてきたが、これからは賃貸住宅への支援を強化していく必要がある」と語っている。

木造化の流れは新次元へ

物件情報サイトが木造住宅の地位向上促す 

脱炭素化など環境分野では、住宅・非住宅を問わない木造化の動きが注目される。例えば三井ホームは昨年11月、賃貸住宅「モクシオン稲城」(東京都稲城市、総戸数51戸)を竣工した。5階建てで1階はRC造りだが2~5階は木造枠組み工法というハイブリッド型。すべてをRC造りにした場合に比べCO2排出量を50%削減することができるという。ただ、この物件を挙げた理由はそこにあるのではなく、物件情報サイトが従来の慣習を破り初めてこれを「アパート」ではなく「マンション」として登録した点にある。従来、「木造賃貸」はそれだけで自動的に「アパート」として登録されてきたが、リクルート、アットホーム、ライフルの3社が運営する検索サイトは昨年12月6日から、一定の基準を満たす木造賃貸住宅を「マンション」として登録するようにした。

これは耐震・耐火的に進化する木造住宅の社会的地位向上につながる動きとして注目される。今後は伝統的な“木の魅力”が見直され、木造建築が日本文化の1つとして醸成されていくことが期待される。

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