トップインタビュー・マンション管理の未来54 マンション計画修繕施工協会(MKS)会長 坂倉徹氏(上)


超高齢化社会を迎えた中で増え続けるマンションストック。建物と入居者の高齢化、さらに管理員の高齢化という「三つの老い」が進み、修繕・改修工事等も含むマンション管理業務の重要性がますます高まっている。このコーナーではトップインタビューを通じてマンション管理の未来を追う。今回は、マンション修繕工事を担う企業で構成するマンション計画修繕施工協会(MKS)の坂倉徹会長に、施工業者側からみたマンション管理の現状と課題を聞いた。

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長期修繕計画は3回目工事を組み込んで

――マンション修繕施工業界の現状と課題について。
 坂倉氏 施工業者の仕事は管理組合が修繕積立金を基に長期修繕計画を立てて発注した修繕工事を施工する立場だ。経年マンションのストックは年々増加し、同じ物件が3回目、4回目と修繕工事の回数を重ねる時代に入った。そういった経年マンションは、管理組合発足当初に作成した長期修繕計画やその計画に基づいて集めてきた修繕積立金の根拠が、将来的な工事費単価の上昇を見込んで作成していないケースが多く、管理組合の修繕積立金が不足する事例も出ている。しかし、大規模修繕工事を実現するには費用を捻出しなければならず、修繕積立金の値上げを試みるものの合意形成に至ることが難しい。そのため、工事費のダンピングに応じるような、安価で質の悪い工事を提供する施工業者に発注してしまうという悪循環に陥る恐れを抱いている。そうならないために新築の分譲時から長期修繕計画はせめて3回目の大規模修繕工事の実施までを見込んだ30年以上の計画を立案し、それに基づいた修繕積立金を徴収することが望ましい。3回目の修繕工事にはエレベーターの交換や手すりの交換、場合によってはサッシの取り換え等が加わってくるので、より実際に近い計画になると思う。
 国土交通省は、施工業者やデベロッパー、マンション管理組合など様々な立場を指導・監督する立場にあり、立場によって意見の隔たりがあるかと思うが、大規模修繕については考え方を統一して取り組んでもらいたい。
 マンション管理適正化法の改正で創設されるマンションの管理計画認定制度の中で、長期修繕計画は従前の25年以上としていたところを30年以上にするよう変更になる。修繕積立金のガイドラインは平成21年に公表してから工事単価の平均が約1・5倍に上がっており、長期修繕計画や積立金の見直しが必要だということが広く一般に浸透することを期待したい。

――「2050カーボンニュートラル」の実現に向けた省エネ改修工事の取り組みについて。
 坂倉氏 省エネ改修工事の仕様書を作成する中で、設備機器メーカーとタイアップしながら管理組合のニーズに合わせて、社会的な要請に合致した仕事を行っていくことが大きなテーマになる。太陽光発電パネルについては薄くて、複雑な形状の箇所にも施工しやすいものも開発されている。デザイン性が伴ったものであればより可能性が広がるだろう。省エネ設備機器の技術が進化しているので、施工業者も大いに利用していきたい。
 また、当協会では賛助会員という制度を持ち、建材メーカー等が参画している。新製品を広くPRできる場を設けてあるので、メーカーと十分に情報交換をしながら施工業者の目線を現場で使える製品づくりに生かしてもらえる場にしていきたい。
 
――気候変動による自然災害などが増えている。
 坂倉氏 これまでの常識では考えられなかったような事故が発生する可能性があるので、今まで以上に災害対策に取り組まなければいけない。また、CO2削減という社会的な要請の中で、様々な設備の取り付けや取り換えが発生することが予想され、国の施策としても戸建住宅だけでなくマンションにも太陽光パネルをはじめとした設備の導入が求められる可能性がある。そういった設備の維持修繕費は管理組合にさらに負担をかけることになる。大規模修繕工事の内容や工事費にも影響を与えていくのではないか。
 気候変動への対応として設備を搭載する義務を負わせるだけでなく、例えば太陽光パネルは電力を生み出すのだからそれを売電した費用を充当するなど、管理組合の負担を軽減できる知恵や仕組みが必要な時代になってきていると思う。マンション管理の未来54 マンション計画修繕施工協会会長 坂倉徹氏(下)へ続く

2021/11/5号 月刊マンションタイムズ

マンションタイムズ
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