サステナビリティ開示の枠組み検討へ~金融庁がディスクロージャーワーキング・グループを開催


 金融庁は10月1日、第2回ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)を開催した。同審議会は2018年6月に検討・報告が行われているが、経済社会情勢の変化から再度諮問された。前回報告を踏まえ、開示に関する原則が公表されたほか、ガバナンス情報等の拡充が進展している。一方、昨今ではサステナビリティ(気候変動対応、人的資本への投資、多様性の確保等)、コーポレートガバナンスに関する情報開示が重視され、投資判断や対話に重要な契約内容の開示や英文開示にも課題が散見されており、審議内容は多岐にわたる。第1回DWGでは、なかでも気候変動対応の開示について優先的課題とする意見が多く挙げられた。企業価値にも影響を及ぼす気候変動に対して投資家の関心は高く、開示方法について国際的な議論やルール作成が先行している。こうしたグローバルな開示の方向性と、政策保有株式に関する開示等の国内独自課題とをどのように位置づけ、方向性を示していくのかが注目される。
 第2回会議では、主に優先課題とされた気候変動対応に関する開示について検討が行われた。開示基準は、国際的な枠組みである気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)があり、9月27日時点で日本は世界最多の504機関が賛同を表明する。一方グローバルでは、より議論を深化させ、気候変動を含むサステナビリティの枠組みで世界的に比較可能かつ一貫した開示基準の策定へ動き出している。
国際会計基準(IFRS)財団は、11月に開催予定のCOP26を見据え、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置へ最終段階に入った。ISSBは、TCFD等既存の枠組みをベースとして気候関連情報に関する報告基準の開発を優先して行い、2022年6月を目処にISSB基準を策定する。これについて証券監督者国際機構(IOSCO)が承認を行なえば、各法域の規制枠組みと整合的な基準として、グローバルに一貫したサステナビリティ開示基準が誕生する。ISSB基準は、これをベースラインとして、その上に各国政策による独自基準に基づく要求事項を上乗せすることができる。DWGでは、足元での国際的動向を見守りつつ、長期的視点で日本企業の価値向上を後押しするため、日本としていかに国際スタンダードに関与し、一方で独自の開示基準を策定していくのか審議が開始された。
現在、日本での気候変動対応に関する開示媒体は、有価証券報告書と任意開示によるものが存在する。有報における将来情報の記載について金融庁は、一般に合理的な範囲での変更については虚偽記載の責任を問わないという見解を出している。だが、有報で記載を行う企業は少なく、また、気候変動対応の開示内容には、業種や開示媒体によって記載の粒度・具体性に大きな幅が見られる。こうした現状からDWGは、法定開示内容と任意開示内容の関係性を整理する必要性を指摘した。開示内容については、投資判断にとって重要性を持つ内容であることを前提に、企業が気候へ与える影響などを幅広く開示する動向もある。適切な投資判断を支える企業情報開示のあり方について、日本の姿勢が問われている。

2021/10/15 不動産経済ファンドレビュー

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