シリーズ;住宅市場とECの可能性②交換できるくん・栗原社長に聞く(下)
交換できるくん_栗原将社長

経済産業省が2020年7月に公表したEC(電子商取引)市場調査レポート「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、19年のEC市場(物販BtoC)の規模は年間10兆円を超えた。日本のEC市場規模は過去5年で約1.5倍に達しており、20年以降はコロナ禍が加わり、EC市場の拡大は止まるところを知らない。一方で住宅・不動産分野は地場産業でもありECが定着したのは住宅設備など一部だ。住宅設備に関するEC市場のこれまでと今後についてどう見るか、住設機器販売サイト「交換できるくん」を運営する、株式会社交換できるくんの栗原将社長に聞いた。

シリーズ;住宅市場とECの可能性①交換できるくん・栗原社長に聞く(上)に続く

―売れ筋の設備について。コロナで変化はあったか

栗原氏 例えばトイレをひとつとっても、安い商品と高い商品に二極化していて、中間的なものは売れにくい傾向がある。世間ではタッチレス水栓などコロナ関連の機器の需要が伸びているようだが、学校やホテル、病院や飲食など不特定多数が利用する公共空間のようなところに限定されている。当社は一般家庭向けがほとんどであるため、そこまで影響は受けていない。当社は営業マンが介在する事なく注文ができるので一定の需要の高まりはあったが、一方で緊急事態宣言の間は見送っていた人もおり、差し引きすると緊急事態宣言の前と後で数字的にはほとんど変化がなかった。個人の住宅はそんなに影響は感じられなかったが、リフォーム業界的には去年の4月からしばらくの間は相当落ち込んだはずだ。

そのような市況でも、当社はもっとライフラインに近い場所でビジネスを行っており、設備機器のニーズはそこまで影響を受けなかった。例えば食洗機が壊れたとすると、ユーザーは今までの便利さと自分で手洗いしなければならない不便さとのギャップで、1日でも早く交換したいと感じるだろう。「おうち時間」のニーズが増えたといっても、グレードアップ需要と、すぐに交換したいというニーズとは別マーケットと捉えている。

―住宅設備のE Cはどの程度まで伸びると見ているか

栗原氏 国内のリフォーム市場は6兆円あると言われている。このうち住宅設備機器の割合が2.8兆円。非常に大きな市場だが、果たして消費者はどこに依頼するのか??工務店なのか、ホームセンターなのか、多種多様だ。つまりリフォーム業界には、マーケットリーダーがいないのが実情である。仮に1%のシェアでも280億円、3〜4%でも取れれば1000億円だ。なおリフォーム市場のトッププレーヤーは1000億円企業が数社あるだけで、いずれも大手ハウスメーカー系だ。そう考えると非常に有望であり、取り組むべき分野だと思っている。 

―リフォーム大手も比較的小規模である理由についてどうみているか

栗原氏 リフォーム市場は地場産業であり、一つ一つがオーダーメイドだ。様々なニーズがある中で、人も育てないといけない。だが育てようにも人の出入りが激しいため、水準が下がり結局は品質が落ちてしまう。一方でトッププレーヤーの住宅メーカー子会社の顧客は、親会社の顧客が大半だろう。ハウスメーカーの子会社が、食洗機だけとかトイレだけとか、そのような小規模な工事はあまりやりたがらないのではないか。当社はリフォーム市場の中にいるプレーヤーではあるが、純粋なリフォーム屋ではない。「なんでもやります」ではなくて、得意な住宅設備にフォーカスすることで、規模拡大も可能にした。

―拡大余地はあると見ていると

栗原氏 2.8兆円の市場の多くはE C化できていない。当社の名前もまだまだ知られていない。住宅設備だけを交換できるということも、世間的には知られていない。つまりビジネスチャンスだ。 

―昨年12月に上場した。狙いは

栗原氏 まずネットで工事と言われてもどんな業者なのか顔が見えにくい。このことは20年間ずっと言われていることだった。それを和らげる為には、企業の信用力を高めることが大事だ。今まではかなりニッチな市場をやっているという自覚があった。だが今はAmazonなど大手も住設機器の扱いを始めたことで、俄然このマーケットが注目されるようになってきた。今後プレーヤーが増える事を見越して、名称も覚えやすい現在の社名に変えた。リピーター獲得も重要だ。次に頼むときに、前やった業者の名前を覚えていてほしい。その為一発で覚えられる名前にした。 

―今後の展開は

栗原氏 福岡・札幌含めた5大都市圏に対応している。当社はどこかの下請け企業ではないので、無理にはエリア拡大は行わない方針だ。闇雲に広げたところで品質が落ちるだけだ。まずは今のエリア、そして今やっていることを続けていく。それほど知名度もないので、もっと上げるための展開をしていきたい。今は不動産系の企業からいろんなニーズがある。今後はこうした企業との提携なども進めていければと思っている。今までは「to C」のビジネスだったが、今後は「to B」も視野に入れている。大企業は優良顧客を持っているが、小規模な設備の交換などは受けたくはない。そうした小回りの効く仕事を当社ではできる。知名度を上げつつ、こうした企業との提携なども進められればと思っている。

 

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