立地とグロス価格のせめぎ合い―2020年首都圏分譲マンションの好・不調要因(上)
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2020年の首都圏マンション市場は、1年を通してウィズコロナのマーケットだった。しかし住宅産業に関しては、マイナスの影響が他の産業と比べて軽微にとどまった。年後半からはコロナの影響で賃貸脱出志向が強まるなどプラス面も見られた。どんな物件が好調で不調だったのか。足元の傾向などを見た。


コロナ禍において23区以外でも売れ行きは好転
グロス圧縮傾向強まりコンパクトタイプに注目

 不動産経済研究所が調査した2020年の首都圏分譲マンション販売戸数は2万7228戸で、昨年から12.8%減だった。1992年以来28年ぶりの3万戸割れだが、売れ行きが落ちているわけではない。4~5月の販売自粛で前半が前年比-44%の大幅減となったものの、後半は急回復。7~12月は、前年比10.8%増と供給が増加した。また、価格水準を見ると、平均坪単価は305.7万円で昨年の290.5万円から15.2万円アップ、コロナ禍にもかかわらず販売単価は一段上昇している。
マンション市場調査のトータルブレインが、2020年に販売した物件の売れ行き状況をヒアリングしている。対象物件数は303物件で前年から-53物件、15%減。そのうち252物件で回答を得ており、販売状況が「好調」が43.7%、「まずまず」が37.3%、「苦戦」が19%で好調比率が約6%上昇、コロナ禍でも売れ行きは好転している。エリア別にみると、23区は「好調」が最も高く45.1%、引き続き販売は順調に推移している。一方、郊外エリアでも2019年まで見られた苦戦比率が減少し、販売が好転しており、とくに千葉は「好調」が52.0%と絶好調だ。
 商品のジャンル別にみると、グロス圧縮傾向が強まる中で注目されるコンパクトタイプ(平均面積30~40㎡台)は、都心部を中心に売れ行きは好調を継続している。都心6区(港・千代田・中央・渋谷・新宿・文京)の販売戸数は191戸で前年の596戸から大幅に減少。用地不足と地価高騰の影響を受けたものだが、逆に希少性が上昇している。平均単価は473.5万円で、港区、千代田区、中央区で大幅上昇。都心部のわりに割安感のある物件を中心に顧客の引き合いが強い。千代田区・平河町で供給された「グランリビオ千代田平河町」(日鉄興和不動産・関電不動産開発)は、東京メトロ半蔵門線半蔵門駅徒歩3分の好立地が受け、平均坪単価553.2万円、平均価格7990万円ながら8カ月で完売した。同物件は平均床面積が47.48㎡であり、30㎡台の1LDKが18戸。各階に60㎡台を用意したほか、上層階の4フロアは80㎡台と40㎡台で構成され、投資、実需の両面で幅広いニーズに応えたプランが早期完売につながった。
 平均価格1億円以上の都心ハイグレードマンションは、物件数が年々増加しているが、マーケットの価格が上昇していることに伴い、結果として1億円を超える物件も多い。平均坪単価が低下しており、いわゆる最高級立地の本格億ションが減少し立地条件が低下。坪単価500~600万円以上で立地が弱い物件は苦戦している。この価格帯は競合も多く進捗スピードが低下しているという。「都心ハイグレードは玉石混交。立地力で売れ行きに差、供給も多く、売れ行きスピードも低下傾向にある」(杉原禎之トータルブレイン副社長)。平均価格7000~9000万円台の都心セミハイグレードマンションは、土地の高騰に伴い供給が激減。50~60㎡台のグロス圧縮系商品に好調物件が多く、都心好利便立地と、8000万円前後の価格が、パワーカップル等に評価を受けている。
 23区における平均価格6000万円台までのファミリーマンションは、用地の減少、地価高騰で供給が激減。結果、需給バランスは良好だ。いずれのエリアでも、50~60㎡台のグロス圧縮商品の販売が好調。苦戦物件は、城東・城北の駅徒歩10~15分前後、60㎡台後半~70㎡前後とやや広く、5000万円台後半~6000万円台が多い。駅距離とグロス価格のミスマッチが苦戦の要因だ。
千葉県は、単価、平均価格とも横ばい傾向にあり、市場に割安感が生まれた結果、販売好調にシフトしている。津田沼、行徳、浦安、本八幡といった人気駅で、平均坪単価200万円台後半、平均価格4000~5000万円台のほか、駅力は弱いまたは駅遠立地だが坪単価100万円台後半~200万円前後、平均価格3000万円台の割安物件の売れ行きが好調だ。

立地とグロス価格のせめぎ合い―2020年首都圏分譲マンションの好・不調要因(下)に続く

2021/2/15 不動産経済ファンドレビュー

不動産経済ファンドレビュー
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