市場環境が大きく変わる中で ―2020年の分譲マンション商品企画を見る(上)
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 2020年はコロナ禍で多くの業界が苦境に陥るなか、住宅産業に関しては、売れ行きの悪化も少なく、比較的健闘している。一方で住宅の量的充足が話題となり、新たなマーケットの開拓にも目が向けられていた。市場環境が大きく変わった今年、分譲マンションではどのような新商品が企画されたのか。足元の供給動向を見る。  


コロナでこれまでの価値観に大きな変化
大手以外の供給比率高まりコンパクト化も

 デベロッパー各社は、ターゲットを子育てファミリーから、シングル、DINKS、パワーカップル、シニア、富裕層、投資家層などに広げ、変化するライフスタイルや価値観、ワークスタイルに対応した新しい商品の開発に取り組んでいた。しかし今年は、コロナによってこれまでの価値観に大きな変化が起こり、多様化と変化のスピードが一気に加速した。そのため、デベには新商品の企画開発において、より高いスピード感が求められている。
 そうした中、どのような商品が発売されたのか。マンション市場調査のトータルブレインが調べた今年1~10月に新規に供給された物件数は280物件、2万2160戸(販売戸数ではなく総戸数)だった。81社が供給しており、野村不動産をトップに大手が上位を占めているが、大手6社の総戸数は7864戸で全体の35%に止まり、コロナによる前半戦の販売自粛のマイナスの影響が大きかったことがわかる。


 大手・準大手以外のデベロッパーによる供給比率が高まる中で、グロス圧縮傾向がさらに強まっている。分譲単価の上昇を吸収するために面積をさらに1回り圧縮するためだ。そこでマーケットに1つの傾向として現れたのが1LDKや2LDKといったコンパクト商品の増加だ。物件数ベースで23区ではコンパクト比率が25~30%、とくに城東エリアでは45%と高く、都下や神奈川、埼玉など郊外部でも15%前後にある。分譲マンション市場における好立地化、単価高騰により、2018年以降コンパクトの供給比率が上昇していたが、ここへきて急激に伸びている。日鉄興和不動産、日神不動産、東急リバブル、オープンハウス・デベロップメントが供給上位。三井不動産や三菱地所は1物件ずつで大手は積極的にコンパクトを手掛けていない。


 商品傾向を詳しく見ると、都心エリアでは10物件供給され、比較的価格水準が低めの中央区・文京区・新宿区が多く、坪単価は400万円台前半~中盤が中心。千代田区・港区は500万円台後半とワンランク高いが、600万円台の供給は見られない。駅距離は5分以内が40%だが、6~10分も60%ある。面積と価格のクロス分析を見ると、25㎡台・3000万円台後半の1K、1Rが多く、1LDKは30㎡台前半で4000万~5500万円台。都心コンパクトは利便性重視のため、1R・1Kと1LDK・2LDKで構成された物件が多い。戸数規模は39戸以下が7割だった。

 近年供給が多い城東・城北エリアは21物件供給され、台東区・墨田区・荒川区を中心に駅距離5~6分が中心。平均単価は300万円台前半~中盤がメインだが、一部で400万円の供給も見られる。30㎡台・1LDKが2500万~3500万円台。供給の7割が1LDKで占められ、戸数規模も39戸以下が7割だった。

 近郊・郊外エリアは15物件が供給され、ほとんどが駅徒歩5~6分までの立地だが、三鷹・調布・町田・川崎等のメジャー駅以外での供給も見られる。分譲単価は200万円台後半~300万円台前半が中心。間取りは1LDKに特化した物件が多く、2・3LDKまでをラインナップした物件は少ない。 
 23区では30㎡台前半を中心に20㎡台後半~40㎡台に分布。グロス価格は、3000万円~4000万円台、中心商品は30㎡台前半・3000万~4000万円台前半だった。都心部でも1LDKは5000万円台中心でグロスアッパーは6000万円台まで。近郊・郊外では30㎡台前半・2000万円台後半~3000万円台前半が中心だった。

 2020/12/15 不動産経済ファンドレビュー

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