2022年宅建試験に向けて 合格への筋道③  成人年齢引き下げ 取引デジタル化 試験でどう問われるか みやざき塾主宰・宮嵜晋矢氏

 2022年の宅建試験に向けて‥今年は成人年齢が引き下げられたほか、不動産取引のデジタル化など重要な法改正がある。こうしたポイントは宅建試験でどう問われるだろうか。今年初めて受験に臨む初学者の人や、何度もチャレンジしていて今年こそは合格!と考えている「不動産業界人」に向けて、宅建試験で問われることは何なのか、学習のポイントはどこにあるのか。来年で宅建試験の指導歴20年を迎える、ベテラン講師のみやざき塾主宰・宮嵜晋矢氏に話を聞いた。

2022年宅建試験に向けて 合格への筋道②より続く

宮嵜晋矢氏 プロフィール

03年に宅建試験の指導を開始。LEC東京リーガル マインドでの指導を経て、日建学院へ移籍。同学院で講師や教材開発に携わりつつ、11年から個人の指導塾「みやざき塾」を開講した。

宮嵜晋矢氏

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重要な法改正として、成人年齢が引き下げられた。法改正はどう問われるか。 

 今年の重要な法改正はそれほど多くはない。まず重要なのは質問にもある通り未成年者(制限行為能力)の年齢。令和4年4月1日以降は18歳未満が未成年者だ。18歳ぴったりを含む18歳以上が成年者だ。未成年の場合にどういうルールがあるか。年齢に関する論点は少しあるので注意すべきだ。だが成人年齢が変わったということだけで、未成年者に対する考え方はこれまでと同じ。改正をきっかけに出題の可能性があるということだ。

 あとは国税。所得税法で住宅ローン控除制度を押さえておく。出るとしたら「問23」で問われる。住宅ローン減税で制度改正が相次いでいて、住宅ローン控除の所得要件とか、既存住宅に関する部分で改正があった。だが住宅ローン控除は15年間出題されておらず、平成18年の過去問があるだけだが、一応やっておいてほしい。

 国税では所得税以外だと贈与税がある。贈与税は相続税法の一種だが、宅建試験では贈与税がピンポイントで出題される。直系尊属が子や孫に対して住宅購入資金を出した場合の特例が出題される。非課税制度と相続時精算課税制度の二つがあって贈与を受ける側(受贈者)の年齢が成年者である必要がある。「18歳以上」という要件が先ほどの制限行為能力の部分と絡む。

加えて非課税制度については、非課税となる限度額が毎年変わっている。試験ではあまり出題されないが一応チェックしておきたい。後は昨年の法改正で、特例を受けるための要件の床面積も変わっている。そこは出る可能性がある。「年齢」と「床面積」に注意がいる。国税は時間がない人は捨てるという選択肢もある。ただし今年出てくる可能性が高いのは印紙税。印紙税を優先的に学習しつつ、こちらで紹介した論点にも注意した方がいい。

 署名・押印の電子化といったデジタル改革の関連では

 宅建業法関連で「問45」が指定席の住宅瑕疵担保履行法だ。新築住宅の売買で売主が宅建業者、買主がアマチュアの場合に適用される法律だ。そこで改正された箇所が2つある。一つは売主の業者が新築住宅を引き渡し場合の基準日。基準日はこれまでは3月末と9月末の年2回あったが、改正により3月末の1回になった。これまで試験で日付を問われたことはないが、3月31日になったことは 知っておいてほしい。

 それと瑕疵担保履行法関連でもう一つ。買主との契約前に供託所に関する説明をするが、説明する際の書面交付の方法について、買主から承諾があれば電磁的方法(PDFなど)でも大丈夫になった。それと併せて保険証券を買主に交付する場合も、買主からの承諾があればデータで良くなった。

 政府全体で進めている施策である「署名・押印の電子化」を受けて、宅建関連ではこれまでの書類のやり取りからデジタル化へ大きくシフトしている。35条・37条書面のデジタル化が2022年5月18日から施行されることは、業界の人ならば知っているだろう。ただし試験で問われるのは今年4月1日時点の基準。今年の試験の出題範囲ではない。一方で住宅瑕疵担保履行法は一歩先にデジタル化の流れを受け、宅建業法関連では先行的に施行されている。そう考えると今年の試験で問われる可能性は大いにある。要注意だ。

 試験が実施される10月の段階では35・37条書面のデジタル化が解禁されている。試験で改正前のルールで問うことはあるだろうか

 当然そういう場合は出さない方がいい。だが出る可能性はある。例えば宅地造成等規制法は毎年必ず1問は出る。年内に改正されるだろうが、改正点をうまくかわして上手に出してくれたらいいなとは思う。これには試験委員の個性が影響する。「4月ルール」だから出してもいいと考える人、だが現実にルールは変わっているから改正前の知識で出すのは野暮と考える委員もいる。人によるとしか言えない。

昨年の試験では「令和3年4月1日時点で18歳の人は携帯電話の契約はできるか」と問われた。令和3年4月1日時点の成年者は20歳以上だ。令和4年4月1日であれば18歳から契約できることになるが。そういう風に出題されてはいる。だから今年10月の試験で、35条・37条書面の記名・押印とか、承諾があれば電磁的方法でもいいといった、そういう受験生を惑わすような出題は個人的には避けて頂ければと思う。最新のルール知っている人が間違えるような問題は本来良くないはずだからだ。

一方で旧借地法・旧借家法は試験では問われていない。現実には旧借地法・旧借家法は、旧法化で契約された借地・借家の場合に適用されている。そこを出してこられると試験としては本当に厄介だ。平成13年の宅建試験で借地借家法の改正の経緯で旧法を問われたことはあるが、それ以降は1度も出題されていない。

今年合格を目指す受験生に向けて一言

 まずは合格点をしっかり取りましょう。50問中20問出題される宅建業法をしっかりやることだ。その中でも受験生の間で差がつきやすいところで媒介契約、35条・37条書面、クーリングオフ。このあたりは最優先かつ丁寧に学習してほしい。それと過去20年分の受験生の解答データを見ると、法令上の制限も合格者と不合格者で大きく差がついている。合否を分ける問題があるからしっかり勉強してほしい。中でも都市計画法の開発行為、農地法、国土利用計画法、宅地造成等規制法と、税法では地方税を最優先で学習してほしい。 

 5問免除問題は

 50問受験の人でも簡単に4、5問正解できるから、是非みやざき塾の教材を活用してもらいたい。去年は統計問題は1分で1点取れた。「ほとんど下落しているのに下落してないのは何か」と問われた問題だ。「工業地と登記件数、宅建業者数」以外は皆下落と、みやざき塾塾生ならば語呂合わせ『工場 と 宅建業者』で答えられた。今年については逆に皆「上昇」している。また新しく語呂合わせを作りたい。

 権利関係は

 まず学習すれば必ず点数が取れるところ。宅建業法20問、それから開発、農地、国土、宅造、地方税と5問免除問題。ここまでで30問分ある。その30問分で27点〜30点をしっかり取ってもらいたい。合格まで必要なのは後4〜7点。それをどう取るかという話だ。

 だから権利関係は極端な話、4点でいいなら好きなところを勉強すればいい。それで受かる人は受かる。残りの都市計画法1問、建築基準法2問 土地区画整理法1問も残っているし、国税も地価公示(鑑定評価)も残っている。権利関係は好きなもの一直線で受かる人は受かる。でもそれは少しギャンブル。理想的な順番を言えば、賃貸借、借地借家法、区分所有法の順。そこでしっかりとる。あとは不動産登記法と相続。ここまでは必ず出てくる。あとは出てくるかどうかわからないテーマだから、AAランク、Aランク等優先順位を参考にして好きなところをやればいい。学習は優先度の高いところからやるべきだ。

 これまでピックアップしたところだけで35点分になる。あとは自分が点数取りやすいところでプラス2、3問の正答が取れればもう合格確実圏。あとは建築基準法とか 土地区画整理法とか 地価公示・鑑定評価とか見つけらればそれでもう安全圏で合格だ。だから権利関係は時間があれば全部やりましょうというスタンスで十分だ。学習時間が少ない場合や効率的に進めたいのなら権利関係は後回しだ。

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